研究課題/領域番号 |
16K08947
|
研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
井平 勝 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 教授 (10290165)
|
研究分担者 |
榎本 喜彦 藤田保健衛生大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00387713)
杉山 博子 藤田保健衛生大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10387714)
東本 祐紀 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 助教 (20569701)
吉川 哲史 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (80288472)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | LAMP / RPA / HDA / PSR / HHV-6 / VZV |
研究実績の概要 |
LAMP法は、簡易遺伝子増幅法として広く利用されるようになってきたが、primer設計は複雑で高感度検出系の構築には経験と時間を要する。我々は、熱変性工程によって検出感度が上昇することを報告したが、さらなる簡便化のためには熱変性工程以外の手法を検討する必要があった。そこでLAMP法と他の等温増幅法(recombinase polymerase amplification(RPA)、Helicase dependent amplification(HDA))を組み合わせることで感度が上昇する可能性考えた。昨年度は、RPAに必須の3要素、Recombnase、SSB、ATPを添加しLAMP反応が起こることを確認した。次に前述の3要素をLAMP試薬に添加し、至適条件を設定した。しかし、熱変性LAMP法を上回る感度を得ることができなかった。その理由として、DNA合成酵素であるBst polymerase(LAMP法)、 Recombnase(RPA法)それぞれの至適反応温度が異なることが考えられた。そこで、近年報告された他の等温核酸増幅法について検討することを計画した。これは、polymerase spinal reaction(PSA)法と呼ばれ リング状基本構造から自己を鋳型として増幅が進行する方法である。LAMP同様に増幅産物の濁度判定も可能、LAMP反応と同一酵素で反応が進行、単純な増幅様式のため増幅基本単位も構築しやすくLAMP反応と組み合わせることが可能と予想した。本年度は、従来から感度改善の必要性が高かったVZV の核酸増幅を目的として、PSR法のprimerを設計、至適温度、Mg濃度などの至適条件を決定、遺伝子増幅感度を従来のLAMP法と比較した。さらに等温増幅で利用可能なE-probe(ダナフォームKK)とPSR法を組み合わせてDNA定量評価法の構築を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)ORF62領域にPSR primerを設計した。基礎検討としてPSR反応に必要な試薬のうちMg濃度(4mM、6mM、8mM、10mM)、トレハロース(0mM、80mM、100mM、120mM、200mM)の至適濃度について、同一テンプレートを用いて濁度が0.1に達する時間を基準に決定した。さらに至適反応温度(63度、65度、67度)についても決定した。PSR実施上のその他の反応条件は、以下の通りである。10x thermopol buffer, 0.8M betaine, 1.4mM dNTPs,8U Bst polymerase (total 20μl)。サンプル5μlは、LAMP法にてVZV DNA陽性が確認された帯状疱疹患者病変部ぬぐい液で、検体を10-2~10-4希釈して用いた。Mgの至適濃度は8mM(10-2:1302秒、10-3:1578秒、10-4:1839秒)だった。核酸やpolymeraseを保護,反応阻害物質を吸着するとされているトレハロースは、いずれの濃度でも反応効率に差はなかった。至適温度は、65度(10-2:1329秒、10-3:1554秒、10-4:1824秒)が最も優れていた。至適条件を設定後、感度決定のため標的領域をサブクローニング、DNAを抽出後10倍段階希釈し1x106から1コピー/反応になるように調節し、PSR反応を行った。その結果、感度は10コピー/反応だった。従来のLAMP反応と比較し検出感度は10倍上昇していた。60分前後で陰性コントロールの濁度上昇が認められたが、電気泳動の結果primer ダイマーによる偽陰性反応であることを確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
PSR法にてVZV DNAの増幅が確認され、VZV LAMP法よりも新PSR法のほうが高感度なことが明らかになった。しかし、同時に陰性コントロールの非特異的増幅が確認され、primerどうしのアニールが鋳型となり増幅起点となることが明らかになった。この問題を解決するためには反応時間短縮、primerの再設計、プローブの併用などが考えられるが、反応時間短縮は感度低下につながる可能性があり望ましくない。さらに、primerの再設計は至適条件の再検討を要し現実的ではないことから、今年度は新たなプローブを併用したPSR増幅産物の特異的検出を検討する。近年開発されたE-probe(ダナフォーム)は、等温増幅法のプローブとして利用可能であるが、PSR法と組み合わせた報告はない。PSR法による増幅産物をE-probeにより検出することで、特異性の向上のみならず増幅産物の定量評価が可能となると予想される。また、E-probeを用いることで増幅後の熱解離曲線分析も可能で、増幅産物のSNPs解析も可能となり得る。最初に、専用ソフトにてE-probeの設計を行い、次に至適条件(probe濃度)を検討する。その後、E-probeによる定量評価法の感度、特異性、定量性を評価する。そのうえで臨床検体を用いてLAMP法とPSR法の検出率を比較する。さらに臨床検体を用いた定量評価については、VZV real-time PCR法と比較することで評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、迅速、簡易な検査法を構築することを目的に本邦で開発されたLAMP法を中核に特にヘルペスウイルスのためのpoint of care Testingを目的としている。最初に感度を上昇させるために他の等温増幅法(RPA,HDA)と組み合わせることを考えたがそれぞれの酵素至適条件の相違から2段階の温度が必要など条件設定に難渋し、予定していた定量法の検討に至らなかったのが主な原因である。すでに昨年度までにPSR法を用いた標的遺伝子の増幅、LAMP法と比較して10倍高感度な方法を構築できた。本年度は、PSR法による標的遺伝子の構築を行う。LAMP法とは異なったユニークなprimer構造を持つPSR法とLAMP法を組み合わせにつても検討する。
|