研究課題/領域番号 |
16K08951
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
小林 良樹 関西医科大学, 医学部, 講師 (10375298)
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研究分担者 |
神田 晃 関西医科大学, 医学部, 講師 (70375244)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ステロイド感受性 / ホスファターゼ |
研究実績の概要 |
本年度は、手術標本のサンプリング・非脱灰凍結標本作製、そして一部のサンプルに関しては培養方法の検証を行った。サンプリング箇所に関しては、手術時間などのことも考慮すると複数箇所からのサンプリングは困難であり、好酸球性副鼻腔炎症例からは、ポリープ一塊およびコントロールとして鈎状突起粘膜、対照としてのアレルギー性鼻炎症例からは、鈎状突起粘膜を中心に行った。 ポリープをホールマウントで培養すると上皮細胞と線維芽細胞が混在した状態で増殖するために、ポリープに関しては実体顕微鏡を用いて上皮成分を剥離し、上皮細胞と線維芽細胞成分を分けて培養した。その後、上皮細胞成分と線維芽細胞成分におけるステロイド感受性を検討した。ステロイド感受性に関しては、FKBP51 mRNA誘導および炎症性サイトカイン抑制に着目して検討したが、上皮細胞成分における反応性が優れていることがわかった。この結果を裏付けるようにステロイド受容体の機能に関与するホスファターゼ(PP2AとPTP-RR)が上皮細胞成分において線維芽細胞成分より多く発現していた。以上の結果を参考に上皮細胞をターゲットに研究を進めていくことにした。 好酸球性副鼻腔炎症例のポリープ上皮細胞と鈎状突起上皮細胞におけるステロイド感受性の比較も行っているが、現時点では有意な差は認めていない。同様に前述のホスファターゼ発現に関しても有意な差は認めていない。一方で、好酸球性副鼻腔炎症例由来の上皮細胞とアレルギー性鼻炎症例由来の上皮細胞を比較した場合は、好酸球性副鼻腔炎症例においてホスファターゼ発現が低下している傾向を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
手術標本のサンプリングに関して、手術時間の問題などもあり、予定していた複数箇所からの採取が困難であり、解析が十分に行えていない。 また、非脱灰凍結標本作成から通常のHE染色を行う過程は問題なく行えているが、免疫染色のテクニカルなポイントがいくつかクリアできていないため、免疫染色による評価が行えていない。 さらに、サンプルから剥離した上皮細胞成分の培養も並行して行っているが、定着・増殖するまでに2~3週間の時間を要することもあり、サンプル採取後にコンスタントに実験に利用できないことが多い。
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今後の研究の推進方策 |
手術標本のサンプリングに関しては、患者および術者の負担にならない採取方法(ポリープ以外の採取箇所など)を再検討する。少なくともポリープ上皮と鈎状突起上皮におけるステロイド感受性に差はないような結果が得られているので、症例をもう少し増やして確認した上で、採取箇所をできるだけ限定するようにする。 免疫染色の改善策として、非脱灰凍結標本の扱いについて(特にプレパラートへの固定方法)工夫すること、また、必要に応じては従来のパラフィン包埋の標本を使用することも検討する。 免疫染色がうまくいかない場合には、ポリープを含めた複数箇所の粘膜上皮(またはそれを培養した上皮細胞)におけるステロイド受容体の発現やステロイド感受性の測定を行い、機能的なステロイド受容体の存在するエリアを推定していく。 また、同時に採取した粘膜上皮の初代培養上皮細胞において、ステロイド感受性に関与するホスファターゼをノックダウンさせ、ステロイド抵抗性モデルの作成に取りかかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた免疫染色用の標本作製の過程で改善すべきテクニカルなポイントがあるため、研究が少し遅れている状況である。免疫染色に関わる消耗品に使用する予定であった予算が残っている。
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次年度使用額の使用計画 |
遅れている免疫染色に関しては、引き続き非脱灰凍結標本の扱いについて(特にプレパラートへの固定方法)再検討していく予定である。うまくいくようであれば、予定した通りに使用し、困難な場合には、ブロックでパラフィン包埋標本を作製するか、専用のトレー(ディッシュあるいはプレパラート)に剥離したポリープ上皮を培養するかして、免疫染色を行うようにする。何れにしても本年度残った予算は、免疫染色に関わる消耗品に使用する予定である。翌年度分として請求した予算に関しては、計画書に基づき使用していく予定である。
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