研究実績の概要 |
本邦における脂質異常症, 特に高トリグリセライド(TG)血症および低HDLコレステロール(HDL-C)血症に及ぼす遺伝因子を明らかとすることを主な目標とした。血清脂質値, リポ蛋白値および臨床経過よりWHO分類5型に分類後、特に高TG血症および低HDL-C血症に注目して解析した。白血球分画よりDNAを抽出し, 脂質異常症と関連遺伝子との関係を検索した。福岡大学病院で血清TG検査を受けた患者より、1000mg/dL以上の重症高TG血症症例を抽出し、23例について次世代シーケンサーを用いたエキソーム解析を行い、49遺伝子の遺伝子変異・SNPの情報を得て遺伝子解析を行った。今回の解析では、4つの新たな変異、 APOLIPOPROTEIN B(APOB)遺伝子のp.I4533L、MLX-INTERACTING PROTEIN-LIKE(MLXIPL)遺伝子のp.M490I、NEUROCAN CORE PROTEIN PRECURSOR(NCAN)遺伝子のp.L152MとT-CELL IMMUNOGLOBULIN AND MUCIN DOMAINS-CONTAINING PROTEIN 4(TIMD4)遺伝子のp.S264Tを見出した。更に以前の報告およびアルゴリズム解析により、GPIHBP1 (p.C14F)、APOA5(p.T184S; p.G185C)、APOE(p.E262K,p.E263K)、GCKR(p.V103M; c.354+1G>A; p.P446L)、LMF1(p.M159V; p.G410R)、MLXIPL (p.Q241H)、LRP1(p.G813R; p.R2173Q2; p.AN4054L2)が高トリグリセリド血症の原因の一つであることが示唆された。低HDL-C血症に関しては、低栄養による総コレステロール低値例を除いて解析した。重症低HDL-C血症1例を含む低HDL-C血症4例の遺伝子解析を行い、重症低HDL-C血症の1例よりABCA1遺伝子変異p.V635fsX658のホモ接合体変異によるABCA1欠損症を見出した。
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