研究課題
尿中ジアセチルスペルミン(DiAcSpm)は、早期の大腸癌を含む各種の癌に対して高い癌検出能を示し、しかも被験者に苦痛を与えない尿検査による判定が可能な汎用腫瘍マーカーである。近年の研究で我々は、DiAcSpmが肺癌の浸潤性と関連するほか、大腸癌、肺癌等において、再発リスク評価に役立つ可能性があることを見出した。そこで、これらの研究をさらに発展させ、各種の癌における尿中DiAcSpm測定の意義の解明を通じてDiAcSpm検査の臨床的意義を確立することを目的として研究を行った。我々は、非小細胞肺癌の完全切除症例について術前尿中DiAcSpm値が高値の患者群は低値の患者群と比較して有意に予後不良であることを示していた。本研究では、大腸癌の予後予測における術前腫瘍マーカー値の意義について検討し、早期再発リスクがDiAcSpm、CEAの両方低値群、一方高値群、両方高値群の間で有意に異なることを明らかにした。また、子宮体癌において、癌が子宮内膜に限局し筋層への浸潤が認められないIa期の段階から、癌組織のDiAcSpm値が正常組織より有意に高いこと、子宮筋腫等の良性疾患では、患部組織でも有意なDiAcSpmの上昇は認められないことを明らかにした。病変部組織のDiAcSpm値によって癌組織と良性疾患を識別するためのROC曲線を作成したところ、曲線下面積は0.95を超える高い値となり、組織DiAcSpmの測定が良性・悪性の鑑別に有効な方法であることを明らかにした。また、これらの研究と並行して細胞、組織の悪性化とDiAcSpm上昇との関連を解明し、腫瘍マーカーとしての挙動の生理・生化学的基礎を明確にするための研究として、腸管腫瘍を多発するApc遺伝子ヘテロ欠損マウス(Minマウス)を用いた癌組織におけるDiAcSpmの変化を測定し、腫瘍形成過程におけるDiAcSpmの上昇を明らかにした。
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Journal of Proteomics
巻: 217 ページ: -
10.1016/j.jprot.2020.103686
ポリアミン
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