研究課題/領域番号 |
16K08959
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
山陰 一 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (40598900)
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研究分担者 |
小谷 和彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (60335510)
浅原 哲子 (佐藤哲子) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究部長 (80373512)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 肥満 / 単球 / 炎症 / 脳心腎合併症 / 慢性腎臓病 |
研究実績の概要 |
本年度は、肥満症・糖尿病コホートを基盤に、ヒト末梢血単球機能(炎症性M1/抗炎症性M2比)、頸動脈硬化巣の形質(M1/M2比)及び脳心血管病・慢性腎臓病リスク因子や心腎脳合併症との関連について横断解析を施行した。その結果、頸動脈内膜剥離術施行患者24例(非糖尿病12例、糖尿病12例)にて、糖尿病合併により単球及び頸動脈プラークの炎症性が亢進することを見出した。また、M1/M2マーカーと糖代謝指標との関連解析から、特にプラークの炎症性亢進と糖代謝能悪化とが関連し、さらに単球の炎症性はプラークの炎症性と正相関することを初めて明らかにした。以上より、糖尿病患者にて、単球形質(M/M2比)は動脈硬化進展の新規バイオマーカーとなる可能性を見出した(J Atheroscler Thromb、2016)。また、当該頸動脈内膜剥離術施行患者にて、腎症合併率(ステージG3a以上)には糖尿病有無にて有意差は認められなかったが、G3a以上の集団においては、糖尿病合併によりプラーク中TNF-α陽性細胞率が上昇することを見出し、糖尿病による腎症悪化と動脈硬化進展との密接な関連を認めている。 肥満・糖尿病モデルマウスを用いた基礎的検討にて、新たな肥満・糖尿病感受性遺伝子としてTREM2遺伝子を同定した。TREM2は主に単球やミクログリアに発現し、ゲノムワイド関連解析から認知症との関連が示唆されている。本コホートにおける横断解析から、血清TREM2が非肥満糖尿病患者における認知機能低下の新たなマーカーとなる可能性を見出した(日本肥満学会、2016)。また、生活習慣病薬による炎症細胞機能(炎症応答、オートファジー誘導能)への影響も検討し、オメガ3系脂肪酸が活性化ミクログリアにて長寿遺伝子SIRT1依存的にオートファジーを誘導し、炎症抑制に寄与する可能性も明らかにした(BBA、2017)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 肥満症・糖尿病コホート及び京都医療センター脳神経外科との連携における横断解析から、頸動脈硬化症患者においては、糖尿病合併により単球機能の異常が生じ(炎症性亢進)、プラークの炎症性亢進・動脈硬化進展に寄与する可能性を明らかにした(J Atheroscler Thromb、2016)。 2. さらに、当該頸動脈硬化症患者において、腎症ステージG3a以上では糖尿病合併によりプラークの炎症性が亢進することを認め、糖尿病による単球・マクロファージ機能悪化(炎症性亢進)を介した動脈硬化進展と腎症悪化との密接な関連を見出している。 3. 肥満・糖尿病モデルマウスによる基礎的検討から、肥満・糖尿病にて発現が亢進する遺伝子として、認知症との関連が示唆されるTREM2遺伝子を新たに見出した。さらに、本コホートを基盤とした横断解析より、非肥満糖尿病患者にて、血清TREM2は糖代謝能悪化・炎症亢進を介した認知機能低下の新規バイオマーカーとなる可能性を明らかにした(日本肥満学会、2016)。現在、血清TREM2と慢性腎臓病リスク因子(推算糸球体濾過量等)との関連解析により、肥満・糖尿病合併慢性腎臓病におけるTREM2の病態生理学的意義の検討についても準備を進めている。 4. 炎症細胞に対する生活習慣病薬の作用の検討から、オメガ3系不飽和脂肪酸は活性化ミクログリアにおいて長寿遺伝子SIRT1経路を介してオートファジーを誘導し、細胞小器官の品質管理・細胞機能維持を導くことで炎症抑制に寄与する可能性を明らかにした(BBA、2017)。本知見に立脚し、肥満・糖尿病モデルマウスを用い、生活習慣病薬による単球・腎臓在住マクロファージ機能への影響や腎メサンギウム細胞・腎尿細管上皮細胞機能への影響(SIRT1発現、オートファジー誘導やアポトーシス抑制等)の検討の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果に立脚し、次年度は、次の計画I、IIにより、肥満・糖尿病における脳心腎合併症発症・進展に関与する新たな候補分子としてTREM2の病態生理学的意義を明らかにし、合併症進展予防のための新規バイオマーカー確立を目指す。 I. 肥満症・糖尿病コホートにおけるTREM2の臨床的意義の検討(臨床研究) 本コホートを基盤とした縦断解析にて、慢性腎臓病発症・進展、認知機能変化、血清TREM2、末梢血単球の炎症性M1/抗炎症性M2比や体組成・代謝指標・炎症等の変化の関連解析により、脳心腎合併症に影響する因子としてのTREM2の臨床的意義を解明する。さらに、食事・運動療法・禁煙等の生活習慣改善・減量や糖尿病薬等の生活習慣病薬が血清TREM2、単球機能や慢性腎臓病リスク因子に及ぼす影響を解明する。 II. 新規肥満・糖尿病感受性遺伝子TREM2の機能的意義の検討(基礎研究) 肥満・糖尿病モデルマウス、TREM2ノックアウトマウス(作製済)を用い、高脂肪食有無にて、肥満・糖尿病に伴う腎機能障害や認知機能変化、腎臓等の組織学的変化、骨髄・末梢血単球の機能的変化、脂肪組織を含む各組織の炎症レベル等を検討する。また、マウスマクロファージ細胞株、ヒト単球系細胞株THP-1やヒト末梢血単球を用い、遊離脂肪酸等の刺激によるTREM2発現変化、抗TREM2刺激抗体による炎症応答や関連シグナル経路の同定・活性化レベルの検討、TREM2のノックダウンや過剰発現による炎症応答への影響を解析することにより、TREM2を介した炎症応答の分子機構を検討し、肥満・糖尿病による腎機能障害との関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に予定している肥満症・糖尿病コホートにおける臨床研究(腎機能障害発症・進展、認知機能の変化、血清TREM2、末梢血単球の炎症性M1/抗炎症性M2比や体組成・代謝指標・炎症等の変化についての縦断解析によるTREM2の臨床的意義の解明)推進のためには、ホルモン測定用ELISAキット代、血液検査外注費やヒト単球の機能解析のためのMACS/FACS関連抗体、遺伝子発現解析関連試薬、研究補助の謝金等が必須である。また、肥満・糖尿病モデルマウス及び新規分子・TREM2のノックアウトマウスを中心とした基礎研究(機能解析と病態意義の解明)推進のためには、上記臨床研究と共有できる試薬の他(抗体等)、専用培地、遺伝子操作関連試薬(ノックダウンや過剰発現等)、細胞機能解析試薬(阻害剤等)、定量PCR関連試薬やマウス維持費等が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
以下の計画に基づいて研究費を使用し次年度研究計画を推進する。 1.消耗品:①ヒト・マウスホルモン測定(ELISAキット代・血液検査外注費):約40万円、②分子生物学関連試薬(MACS/FACSやウエスタンの抗体、PCRのプローブ・キット関連試薬等):約30万円、③培養関連試薬(ウシ胎仔血清、メディウム、抗生物質等)(細胞実験):約15万円、④細胞機能解析関連試薬(RNA調製試薬、定量PCR関連試薬、サイトカイン測定試薬、遺伝子導入関連試薬、ノックダウン関連試薬、刺激抗体等)(細胞実験):約40万円、⑤飼育管理費(動物の購入代、管理代、餌代含む)(動物実験):約25万円。2.旅費:国内外の各学会での成果発表のための旅費:約20万円。3.謝金:研究補助員数名の実験補助代、外国語論文の校閲:約30万円。4.その他:印刷費等:約10万円
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