本研究では、肥満症・メタボリック症候群の減量効果・治療抵抗性を規定する候補遺伝子を同定することにより、個々の遺伝素因に応じた食事・運動・薬物療法の選択(オーダーメイド医療)の確立を目指すことを目的としている。肥満はエネルギー摂取量・消費量、脂肪組織への易蓄積性により規定される。肥満者各人の減量効果には差異があるが、この減量治療効果や治療抵抗性には生活習慣と遺伝素因が関与していると考えられている。利用可能なヒトの前駆脂肪細胞―成熟脂肪細胞の分化系の確立、肥満症での疾患iPS細胞樹立により、ヒト脂肪細胞の分化・成熟過程での生理活性物質やマーカーを知ることにより、メタボリック症候群において関連のより強い遺伝素因、分子生物指標の検索・疾患解析が可能となる。そこで、疾患iPS細胞の解析のため、PPARγ遺伝子発現を蛍光によりモニタリング可能なヒトiPS細胞を用いて、未分化状態からPPARα/β陽性の脂肪細胞を約1カ月間の培養により得られる系を構築した。また、遺伝子変異を有する肥満モデル動物と、負荷飼料を用いた実験より遺伝子と環境因子の肥満度に与える影響について長期的な観察を行った。既に行われてきた肥満の遺伝素因(SNPs)の探索から、脂肪細胞分化に関わる遺伝子に注目してきたが、これらの遺伝子は抽出されておらず、新たな肥満症群ではゲノムワイド関連解析を行い、iPS細胞の樹立が可能な個体において、データベースを構築することとした。
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