研究課題
褐色細胞腫・パラガングリオーマ(以下PPGL)の遺伝子診断は、今世紀に入り大きく概念が変わった分野であり、その理由は以下の2点に集約されよう。(1)新しい原因遺伝子が発見された。(2) SDHB変異が悪性化と密接に関係する。また2017年の新WHO分類ではPPGLは基本的には悪性腫瘍と位置付けられた。現在PPGにおける遺伝性の頻度は、30-40%というのが国際的なコンセンサスである。すなわち、有名な‘10%ル-ル’は、遺伝性の頻度に関しては明らかに過少評価である。一方、PPGLの遺伝的背景の本邦におけるまとまった報告は皆無である。今回、発表者らが筑波大学で解析を担当した約12年の解析結果について報告したい。現時点でPPGLを372例解析済みである(発端者317例、発症前診断55名)。発端者317例中遺伝子変異陽性は113例で,変異陽性率は35.6%である。陽性者の内訳:SDHB. 49例,SDHD. 27例,SDHA. 1例,SDHC. 1例, VHL. 18例,RET.6例,TMEM127. 5例,MAX. 6例であった。SDHB.変異陽性 49例中16例(32.7%)は悪性例であった。下記の点が本邦においても示唆される。1)遺伝性は10%を遥かに上回る。2)SDHB遺伝子変異は頻度が高く、悪性化と密接に関連する。適切な遺伝子診断の必要性の啓発は非常に重要である。
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J Clin Endocrinol Metab
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10.1210/jc.2019-00235