研究課題
ホルモン産生副腎皮質腫瘍のうち原発性アルドステロン症(PA)、Cushing症候群(CS)は多様な心血管系・代謝系の合併症を生じ、またPAは高血圧の約10%、CSはサブクリニカルなものも含めると副腎偶発腫の約8.5%と頻度も高く、臨床的に重要である。本研究では、ホルモン産生副腎皮質腫瘍のなかでもアルドステロン産生腺腫(APA)とコルチゾール産生腺腫(CPA)に焦点を当て、手術で得られる腫瘍組織と隣接する副腎組織(AAG)のDNA(CpG)メチローム解析を行い、トランスクリプトーム解析および既知の遺伝子変異解析および臨床データとの統合によりDNAメチル化を介したエピゲノム因子がホルモン産生副腎皮質腫瘍の病態にどのように関連しているかを検討する。今年はAPA37症例の腫瘍と付随組織における、既報のAPAドライバー遺伝子変異についての検討、また同DNA検体を用い、Infinium HumanMethylation450 BeadChip(イルミナ社)によるメチローム解析およびRNA-sequence(Hi-Sequence, イルミナ社)によるトランスクリプトーム解析を施行した。自験APAの37症例の腫瘍由来DNAより各種体細胞遺伝子変異(KCNJ5:29、ATP1A1:2、ATP2B3:1、CACNA1D:1、CTNNB1:1、既知変異なし:3)であった。KCNJ5変異APAとその他のAPAの臨床像との関連の検討にて、KCNJ5変異APAは女性に多く、若年発症という従来の報告に加え、術前の降圧が容易、糸球体過剰濾過をきたす、術後の高血圧寛解率が高い、といった特徴を有することをBiochem Biophys Res Commun誌に発表した。トランスクリプトームおよびメチロームデータのバイオインフォマティクス解析については現在解析中である。
2: おおむね順調に進展している
進捗は順調と考える。
現在、施行し他メチロームおよびトランスクリプトーム解析によって得られたデータのバイオインフォマティクス解析を実施中である。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 476 ページ: 614-619
doi: 10.1016/j.bbrc.2016.06.007.