研究実績の概要 |
ヒトより摘出されたグリオーマおよびその周辺の非腫瘍組織を質量分析して得られたマススペクトルを、腫瘍グレード (G) や5-アミノレブリン酸 (5-ALA) 検出の有無、MRI画像の診断結果などのラベル情報と共に蓄積し、関係データベースを構築した。蓄積されたデータを群別した後にロジスティック回帰 (logistic regression, LR) で機械学習し、一患者抜き交差検証で判別性能を確認した。その結果、それぞれの正答率は非腫瘍対GII-III 83.0%、非腫瘍, GII対GIII, IV 91.2%、非腫瘍, GII, III対GIV 89.1%と実用レベルであった。また、GdあるいはFLAIR MRI positive対negative, いずれも80%以上、5-ALA low対high, 95%と、他の方法論による検査結果も予測が可能であることが明らかとなった。以上の結果は当該システムによるグリオーマの診断が可能であることを示している。現在国際誌への論文投稿準備中である。 昨年度までに構築した、人体の組織を直接分析するための術中迅速質量分析用イオン化プローブに加えて、多数の検体を自動で分析可能なシステムを構築した。ディスポーサブルペッスルを用いた簡単な組織のホモジナイズを必用とするが、96穴プレートの検体を数分で検査することが可能である。腫瘍周辺領域の組織を短時間で多数検査すれば、腫瘍と非腫瘍部の境界を正確に判断し、切除領域を狭くすることができる。当該システムを用いてテスト分析を行い、良好なマススペクトルが取得可能であることを確認済である。なお、各種機械部分における要素技術については特許を出願済であり、さらに実用化に向けて各種要素を統合した一体化装置の構築と、臨床試験の実施に向けた準備を進めている。
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