研究実績の概要 |
【目的】本研究では、日常検査における薬剤耐性菌検出の迅速化を目指し、MALDI-TOF MSによる菌種同定と薬剤耐性菌の検出を同時に行なう「耐性菌迅速検査システム」を構築することを目的としている。具体的には、カルバペネマーゼに特異的な抗体を付加した抗体磁性ナノ粒子によりカルバペネマーゼ産生腸内細菌科菌種(Carbapenem Resistant Enterobacteriaceae, CRE)を捕集(30分)し、MALDI-TOF MSによる菌種同定およびCREの検出(数分)を行なう。 【意義および重要性】本研究で使用するMALDI-TOF MSはランニングコストが安価で、処理能力が高いことから、多数サンプルの処理を必要とする検査室での汎用が可能である。また、抗体磁性ナノ粒子による菌の捕集方法は特別なスキルを必要としない簡便な方法であるため、現在検査室で可動している質量分析機と連結させることも容易であり、本システムの導入は細菌検査の迅速性の向上, 経費節減, 業務量の軽減につながると考える。 【研究成果】(1)抗体磁性ナノ粒子への抗カルバペネマーゼ抗体の付加について条件検討をおこなった。反応温度を37℃に固定、抗カルバペネマーゼ抗体は抗IMP抗体, 抗VIM抗体, 抗KPC抗体, 抗NDM抗体の4種類について段階希釈系列(100倍から5000倍希釈まで)を作成し、MacFarland No.0.5に調整した菌液と10分から1時間まで各々反応させ、抗体磁性ナノ粒子への抗カルバペネマーゼ抗体の付加を確認した。検討の結果、使用する菌株により抗体付加の効率に差が生じる傾向が認められたため、ナノ粒子が捕集できる細菌数と反応時間との関係、CRE補集の特異性と再現性についても検討を継続する予定である。また、多くの菌株における反応の再現性を確認するため、菌株の収集をおこなった。
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