研究課題/領域番号 |
16K08966
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川村 久美子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (30335054)
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研究分担者 |
石田 康行 中部大学, 応用生物学部, 教授 (70273266)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸内細菌科菌種 / カルバペネマーゼ産生菌 / マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法 / 磁性ナノ粒子 / 特異抗体 / 耐性菌迅速検査システム |
研究実績の概要 |
【目的】本研究では、日常検査における薬剤耐性菌の迅速検出を目指し、MALDI-TOF MSによる菌種同定と薬剤耐性菌の検出を同時に行なう「耐性菌迅速検査システム」の構築を目指す。具体的には、カルバペネマーゼに特異的な抗体を付加した抗体磁性ナノ粒子を用いて、カルバペネム耐性腸内細菌科菌種 (Carbapenem resistant Enterobacteriaceae, CRE)およびカルバペネマーゼ産生腸内細菌科菌種 (Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae, CPE)を捕集し(30分)、それをMALDI-TOF MSにて解析することで、菌種の同定ならびに耐性菌の検出(数分)を行なう。 【意義および重要性】本研究で使用するMALDI-TOF MSは、そのランニングコストが安価で、検体処理能力が高いことから、多数サンプルの処理を必要とする検査室での汎用が可能である。また、抗体磁性ナノ粒子による菌の捕集は、特別な機器や高度なスキルを必要としない簡便な方法である。これらの方法は、現在検査室で稼動している質量分析機と連結させることも容易であり、本システムの導入は細菌検査の迅速性の向上、経費節減、ならびに業務量の軽減につながるものと考える。 【研究成果】(1) 今年度は、検出対象をCPEにも広げたので、それら菌株の収集および解析を行なった。(2) 抗IMP抗体 、抗VIM抗体などの抗カルバペネマーゼ抗体が、CREもしくはCPEと結合できているかを蛍光抗体を用いて確認した。(3) 抗体磁性ナノ粒子への抗カルバペネマーゼ抗体の付加を、ウエスタンブロッドを用いて確認した。(4)今年度は、精製 IMPを作成した。そして、名古屋大学教育研究支援センター所有のMALDI-TOF MS を用いて解析し、精製 IMPが検出可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研修計画として、(1) 抗体磁性ナノ粒子への抗カルバペネマーゼ抗体の付加に関する検討、(2) 前処理の必要性の検討、(3) 磁性ナノ粒子によるCPE産生菌の捕捉に関する検討、(4) MALDO-TOF MSの条件検討 を挙げた。昨年度、共同研究者 中部大学の石田らが所有するMALDO-TOF MSが故障したので、急遽 名古屋大学教育研究支援センター所有の機種に変更した経緯があり、MALDO-TOF MSの条件の再設定を行なった。その後に、抗体磁性ナノ粒子へ抗カルバペネマーゼ抗体を付加した粒子を用いて、カルバペネム耐性腸内細菌科菌種 (CRE)もしくはカルバペネマーゼ産生腸内細菌科菌種(CPE)を捕捉し、得られたサンプルの測定を試みたところ、検出不可な事例に遭遇した。精製IMPの検出は可能であるので、MALDO-TOF MSの条件よりも、CREもしくはCPE捕捉の操作過程に問題があると考えている。それらの事例について、どの操作過程に問題があるかを現在も検討しており、その意味では当初の予定よりもやや遅れているといわざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、まずカルバペネム耐性腸内細菌科菌種 (CRE)もしくはカルバペネマーゼ産生腸内細菌科菌種 (CPE)の検出不可事例について、その原因を明らかにし、問題を解決する必要がある。具体的には、菌体捕捉作業での取りこぼしがないかを検討するために、捕捉の特異性や再現性、菌種による検出感度の違い、前処理の必要性を検討する予定である。また、同時にマトリックス試薬の検討を行なう予定である。 問題解決後には、最終年度であるので、抗カルバペネマーゼ抗体のスペクトル解析への影響を早急に確認して、影響があった場合には、マトリックス試薬の変更やMALDI-TOF MS/MSでの解析も視野にいれた検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体磁性ナノ粒子へ抗カルバペネマーゼ抗体を付加した粒子を用いて、カルバペネム耐性腸内細菌科菌種 (CRE)もしくはカルバペネマーゼ産生腸内細菌科菌種(CPE)を捕捉し、得られたサンプルの測定を試みたところ、検出不可能な事例に遭遇した。検出不可能となった原因を検討するために、多くの時間を論文検索やディスカッションに使用したこともあり、MALDI-TOF MSの使用料金が予想以上に低く抑えられたこと、また抗体磁性ナノ粒子を使用しない実験系での確認作業が増えたこと(抗体磁性ナノ粒子を購入していない)が、次年度使用額が生じた理由と思われる。 現時点で、抗体磁性ナノ粒子の残量がほとんどないので、次年度早々に抗体磁性ナノ粒子を購入しなければならず、またMALDI-TOF MSの使用回数および時間が、今年度よりも増えることが予想されるので、次年度使用額はそれらに使用する予定である。
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