研究課題/領域番号 |
16K08968
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山城 安啓 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50243671)
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研究分担者 |
亀崎 豊実 自治医科大学, 医学部, 教授 (90316513)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | AIHA / クームス試験 / 赤血球結合IgG / IgG1 / IgG3 / フローサイトメトリー |
研究実績の概要 |
本年度は健常人検体と福山臨床検査センターに送られてきた検体を用い基礎的検討を行った。まず、検体の保存性に関しては、事前の検討では1週間後くらいから高値傾向を示すという結果であったが、症例数を増やし統計解析を行った結果、冷蔵保存で10日以降低下傾向を示すことが判明した。そこで、測定に使用する検体は検体到着後1週間以内に測定することとした。また、フローサイトメーターを使用するにあたって機器の条件設定を行う必要があるが、一番感度の良いGainを調べたところGain2で感度良く測定ができることが判明したためGain2で測定することとした。フローサイトメーターでは、赤血球の平均蛍光強度(MFI)値を測定した。しかし、赤血球は自家蛍光を有しMFI値に影響を及ぼす。したがって、自家蛍光の影響を除くために蛍光標識抗体と反応を行わずに測定したMFI値(MFI Ig-)を差し引いた値を(MFID)とし、これを赤血球結合IgG量とみなした。 健常人検体20検体とCoombs試験陽性検体15検体(Coombs試験1+が5検体、2+が5検体、3+が4検体、4+が1検体)を測定した。健常人とCoombs試験1+~3+の各陽性度の間でそれぞれp=0.0007、p=0.0007、p=0.0019と有意差が認められ、Coombs試験1+と2+、1+と3+の間でも、それぞれP<0.01、P<0.05となり有意差が認められたが、残りの群間では検体数が少ないために関係性を明らかにすることはできなかった。しかし、Coombs陽性度が高くなるほどMFIDが高くなる傾向が見られ、関係性が示唆された。自治医科大学から送られてきたCoombs陰性AIHAが疑われた検体のMFIDとRIA法による赤血球1個当たりの結合IgG分子数の相関を調べたがrS=0.515と相関が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常人検体と福山臨床検査センターに送られてきた検体を用い基礎的検討を行い測定条件を決定することができた。また健常人とCoombs試験陽性検体を用い赤血球結合IgG(MFID)とCoombs試験の関連性をある程度明らかにすることができた。n数が少ないため全てにおいて統計的な有意差を示せなかったものの、関連性が有りそうなことから、この検査法の有用性が示唆できたことは順調に研究が進展していると言える。 この結果に関しては分子生物学会においても「フローサイトメトリーを用いた高感度赤血球結合IgG測定法の確立」というタイトルで発表を行った。また、大学院生の卒業論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
年間に我々が入手できるCoombs試験陽性検体が少ないため、できるだけn数を増やし、赤血球結合IgG(MFID)とCoombs試験の関連性を明らかにする。また、自治医科大学で測定されたRIA法による赤血球1個当たりの結合IgG分子数とMFIDとの関連性も明らかにする。二通りの方法でデータが乖離する症例に関してはそれぞれの施設において再検討することによりデータの見直しをする。 IgGサブクラスにおいて溶血に関連するIgG1、IgG3の測定を行い、臨床結果と比較する。そのために自治医科大学と福山臨床検査センターに送られてきた検体を用い基礎的検討を行う。標識蛍光物質はFITCとPEを用い、それぞれの抗体を標識し赤血球1個にどのように抗体が結合しているのか分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定条件を決めるための基礎的検討が比較的順調に進んだことにより、試薬代や施設利用料が予定より低額に抑えられたこと。また、当初予定していた自治医科大学からのクームス陰性検体の搬送数が少なかったため搬送料及び試薬代が低額になった。学会発表などの旅費を自費で行ったため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
自治医科大学で行われる研究打ち合わせ及び学会発表(日本血液学会・東京)のための旅費。平成29年度は自治医科大学からの検体搬送が頻繁になることで搬送料の増加や、総IgG測定の他にサブクラス別の測定が増えるため試薬代及び施設使用料金が増加するため、平成29年度の研究費と合わせて使用する。
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