昨年度までの研究成果から、Invitogen製の抗体に変更することによりフローサイトメーターを用いた総赤血球結合IgG測定値法の有用性が示唆された。そこで、Cooms陰性健常検体80検体を用いMFID(平均赤血球蛍光強度)値の基準範囲の設定を行った。健常人とされる対象者も様々で、溶血症状などの表現系はとらないもののMFID値が高い健常者がいたため、クームス陰性健常者を対象とした。健常検体のMFID値は正規分布をとり、下限の値は意味のないものと考え平均値+2SDをカットオフ値とした。その後、自治医科大学でRIA法で赤血球結合IgGが測定されたCooms陰性及び陽性AIHA検体と福山臨床検査センターでCooms陽性となった検体の測定を行った。補体成分のみが陽性のCooms陽性検体のMFID値は基準範囲内となった。Cooms陽性AIHA検体は全てカットオフ値を超過した。また、Cooms陰性AIHA検体においても基準範囲より高い結果となった。治療中のAIHA患者検体はCooms試験が陰性になっているが、以前MFID値は高値を示しており継続して治療を進める必要があることがわかった。Coomsの陽性度とMFID値には正の相関が認められたが、Cooms試験が定性法で幅が広いため相関係数は低いものとなった。また、RIA法とフローサイトメトリ法の相関にも正の相関が認められた。しかし、これも赤血球の洗浄の違いからか2つの群に分かれ順位相関係数は低いものとなった。RIA法では白血球を除去する必要があるため、操作が多く低親和性の赤血球結合IgGが剥がれているのかもしれない。コントロール作成などの問題が残るものの、治療効果の判定も可能であるフローサイトメーターを用いた赤血球結合IgG測定値法が確立できたと言える。
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