研究課題/領域番号 |
16K08970
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
坂井 晃 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70284221)
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研究分担者 |
阿部 悠 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00722472)
野地 秀義 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (20347214)
吉田 光明 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (60182789)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療被ばく / CT検査 / 二動原体染色体 / 転座型染色体 / 染色体異常 |
研究実績の概要 |
小児ではCT検査による放射線被ばくと白血病、脳腫瘍発症リスクの関係が報告され、CT検査が疾患の原因となる染色体異常を誘発している可能性がある。放射線照射によって染色体が切断された場合、二動原体染色体 (dicentric chromosome: Dic)と転座型染色体が同じ割合で形成される。我々は大人において1回のCT検査でDNA鎖の切断が誘発されている可能性を二動原体染色体 (Dic) 法で見出したが (Scientific Rep, 2015)、転座型染色体の形成数は増加していたものの有意な変化は認められなかった (JRR, 2016)。そこで年1回のCT検査を3年間施行した時に染色体異常の累積性が認められるか検討した。 悪性リンパ腫の治療終了後3年以上の経過または肺の異常陰影フォロー中の治療歴のない患者8人(27~77歳;中央値63歳)を対象に、年1回のCT検査時にCT検査前後で末梢血を採取し3年間(3回)行った。染色体解析は分離リンパ球を用いてFISH法によるDicおよび転座型染色体解析を行った。1標本当たり2,000 metaphase相当の解析を行いそれぞれの染色体異常形成数を解析した。1回のCT検査における被ばく線量値はCT線量計算システム「WAZA-ARI」(放医研)による計算方法を引用した。 1回のCT検査時の被ばく線量は22.0 mSv~73.5 mSv(中央値40.5 mSv)であった。CT検査によってDic、転座型染色体ともに新規に形成される傾向があり、CT検査に関係なく転座型染色体数の方がDicに比べ多かった。概ね3回のCT検査による染色体異常の累積増加は認めなかったが、Dicおよび転座型染色体ともに8人中1人においてそれぞれの累積増加を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の一部は、2017年の日本放射線影響学会で報告し、さらに解析数を8人に増やし2018年のアメリカがん学会で報告し現在論文を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
概ね複数回のCT検査による染色体異常の累積増加は認められないが、累積増加の傾向を認めた人に関しては、その背景に喫煙や疾病に対する過去に受けた治療との関係が疑われるため、さらに解析数を増やして検討する必要がある。
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