研究課題
放射線災害時の生物学的線量評価方法として二動原体染色体 (Dics) や転座型染色体 (Trs) の形成数を用いた解析方法がある。Dicsは不安定型染色体であるため急性期被ばくの線量評価に用いられ、Trsは安定型染色体であることから過去数年間の被ばく線量評価に用いられる。本研究では低線量被ばくの典型であるCT検査による被ばくの影響をDicsとTrsを用いて解析し、さらに連続3回のCT検査によるこれら染色体異常の累積性についても解析した。また1Gy以下の中~低線量被ばくによる線量評価のため、5人の健常者の末梢血リンパ球に8線量のγ線を照射し検量線を作成した。12人の解析から1回のCT検査前後でDicsは有意な増加を認めたが、Trsでは有意な増加を認めなかった。また別の8人の連続3回のCT検査から、Dicsは1回のCT検査ごとに有意な増加は認めたが、次のCT検査前には減少し3回のCT検査による累積増加は認めなかった。またTrsは1回のCT検査ごとの有意な増減はなく3回のCT検査による累積増加も認めなかった。さらにTrsの形成数はCT検査に関係なくDicsのそれより多かった。検量線に関しては、Dics,Trsともに線量と形成数はよく相関したが、Dicsは個人間でばらつきがあり検量線の傾きも異なった。またTrsは個人間にばらつきはあったが検量線の傾きは同じ傾向を認めた。以上から、Trsでは低線量被ばくによる変化は見いだすことは難しく、さらにDics, Trsともに同じ線量に対しても個人間でばらつきがあり世界共通の検量線の作成は困難と考えられた。
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J Radiat Res.
巻: 59 ページ: 35-42
10.1093/jrr/rrx052.
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