心臓の機械現象に伴う胸壁面の微小形状変化を可視化できる三次元画像センサーを用いた非接触心拍計測システムの臨床応用に向けて取り組んでいる。臨床現場で心臓の収縮拡張様式を簡便に観察することができれば、病態の詳細な把握のみならず、治療評価にもつながり新たな情報として循環器医療に変化をもたらす可能性がある。本システムでは、赤外光によるアクティブステレオ法により被験者の胸腹部の三次元形状情報を取得する。そして、緑色レーザ光源を用いたドットマトリックス投影によるアクティブステレオ法を、Intel RealSenseのカラーカメラを用いて行うことで、心臓拍動にともなう胸腹部の微小形状変化を取得する。すなわち、本研究による非接触心拍計測システム開発の結果、胸腹部の形状と心臓拍動にともなう微小形状変化の同時計測が実現した。 次にこの三次元画像センサーによる非接触心拍計測システムを用いて、心疾患患者を対象に計測を行い、基礎心疾患における収縮・拡張様式の分析と心臓の機械現象の探索的検討を行うために臨床研究(前向き観察研究)を開始した。 東京女子医科大学倫理委員会での承認(承認番号4893)を得て、平成30年9月より被検者の登録を開始、令和元年度は臨床研究の遂行とデータの解析を進めた。令和元年12月までに心疾患患者177例から同意を得て計測が行われた。これらの計測データから胸腹部の三次元形状復元を行った後、心臓拍動による微小形状変化の可視化を行い、被験者の症例・症状により、微小形状変化が異なることが確認できた。胸壁を領域に分割し、領域毎の微小形状変化の時系列データから位相情報を算出することで、症例・症状による差異の定量化が可能となるものと考えられた。症状と特徴量の関連性については、今後、AIの導入を視野に入れて、更なる検討を行う予定である。
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