研究課題/領域番号 |
16K08982
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
江見 充 兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (90221118)
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研究分担者 |
玉置 知子 (橋本知子) 兵庫医科大学, 医学部, 名誉教授 (10172868)
吉川 良恵 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10566673)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノムコピー数解析 / digitalMLPA / 悪性中皮腫 / 腎細胞がん / 環境がん |
研究実績の概要 |
MLPA(Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)法と次世代シーケンサーを組合せたdigital MLPAを開発し、従来法では検出の難しいエクソン単位や一遺伝子領域のコピー数変化(100 bp~3Kb程度)を解析する。解析対象検体は、環境因子による腫瘍発症が知られ、ともに早期発見が難しい悪性中皮腫と腎細胞がんとする。これら遺伝子の変異と癌の発生・進展との関連性、ゲノム再構成機序の解明、及び尿や体液中のcell-free DNAを用いた低侵襲的癌存在診断法確立を本研究の目的とする。 両腫瘍で変異やコピー数変化が高頻度で検出された遺伝子とゲノム変化が生じにくい領域を含め234遺伝子約380エクソンを検出対象としたprobeを設計し、digitalMLPAを実施した。28年度には1.25倍の変動を再現性良く検出するシステムを確立できた。本法を用い、29年度は悪性中皮腫については、3p21領域対象高解像度カスタムCGHアレイ解析済みの腫瘍と対照末梢血のうち、残余のあるゲノムDNA 24ペアをまず解析した。高解像度CGHアレイではBAP1, SETD2のbiallelic deletionがそれぞれ7検体であったのに対して、digitalMLPAでは11及び6検体であった。両者の解析対照領域は異なるが、後者の方が、LOHとbiallelic deletionの判別がしやすく、BAP1のbiallelic deletionがさらに高頻度で生じていることが判明した。また新規変異遺伝子も見出した。 腎細胞がんに関しては、尿中のDNAの解析を試みたが、抽出されるDNA量の個体差が大きく、十分量採れた患者ではCN変化は検出できなかった。血清からDNA抽出し、解析を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性中皮腫に関しては、塩基置換など次世代シーケンサーで検出される変異頻度が低いことから、腫瘍発生までの潜伏期間が30-40年と長く高齢者の発症がほとんどであるにもかかわらず、変異頻度は小児がんレベルと言われてきた。しかし我々の解析により、従来法では検出の難しいエクソン単位や一遺伝子領域のコピー数変化が高頻度で生じていること、その領域はこれまで知られた3p21や9p21だけでなく、新たな領域も見出しており、structural variationが高度に生じていることをより明らかにすることができた。さらに、これまで悪性中皮腫では変異の知られていない遺伝子の増幅を見出し、腫瘍化への寄与について機能解析も開始しており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
腎細胞がんに関しては、血清からは半数以上の患者から通常量を用いた現状の解析に必要なDNAを抽出可能であり、digitalMLPA解析予定である。本検討により低侵襲的癌存在診断の道筋をつけたい。 一方、本学手術摘出悪性中皮腫検体はStage Iの検体がほとんどで、組織中の腫瘍含量が低く、CN変化が検出しにくかった。胸水や腹水から中皮腫細胞を濃縮後解析を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
digitalMLPA技術提供元であるMRC-Hollandから、次世代シーケンス解析試薬の提供を受けたため、予定より物品費が少なく済んだ。残額は87072円と多くはないが、1検体でも多く解析できるよう有効活用する。
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