研究課題
MLPA(Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)法と次世代シーケンサーを組合せたdigital MLPAを開発し、従来法では検出の難しいエクソン単位や一遺伝子領域のコピー数(CN)変化(100 bp~3Kb程度)を解析する。解析対象検体は、環境因子による腫瘍発症が知られ、ともに早期発見が難しい悪性中皮腫と腎細胞がんとする。これら遺伝子の変異と癌の発生・進展との関連性や、尿や体液中のcell-free DNAを用いた低侵襲的癌存在診断法確立を本研究の目的とする。両腫瘍で変異やCN変化が高頻度で検出された遺伝子とゲノム変化が生じにくい領域を含め234遺伝子約380エクソンを検出対象とした。悪性中皮腫(Malignant Mesothelioma:MM)については、70検体を解析した。MM易罹患性遺伝子として知られるBAP1の細胞内局在を調節する遺伝子Xや、脱ユビキチン化ターゲット遺伝子Y, ZのゲノムCN変化を、新たな知見として見出した。BAP1に変異が検出されない検体においても、X, Y, Zいずれかに変異が見られたことから、BAP1を含むsignal pathwayの制御不能がMM発症・進展に寄与する可能性が高いことが判明した。今後Y, Z(転写調節機能を有す)の標的遺伝子からMMドライバー遺伝子を探索予定である。腎細胞がん(Renal cell carcinoma:RCC)については、末梢血、血清、及び腫瘍由来ゲノムDNAの比較解析を実施した。血清DNAにおいてもCN変化は確認されたが、腫瘍とは挙動が異なり、むしろ末梢血に似ており、特定遺伝子のモザイク欠損が検出されたと推定している。本ゲノムCN変化の意義については、今後の検討課題である。本課題研究により、digitalMLPAの有用性と臨床応用可能性が示された。
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J Clin Oncol
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10.1200/JCO.2018.79.0352