研究課題/領域番号 |
16K08989
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
小谷 昌広 鳥取大学, 医学部, 講師 (30529392)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グレリン / 抗癌剤起因性末梢神経障害 |
研究実績の概要 |
殺細胞性抗癌剤のうち、特に乳癌、卵巣癌、肺癌など固形腫瘍で多くの適応疾患があるパクリタキセルは、有害事象として末梢神経障害の発現頻度が高く、重度の末梢神経障害により著しいQOL低下を来すことも稀ではない。またパクリタキセル以外でも大腸がんに対するオキサリプラチンや、造血器腫瘍に対するビンクリスチンなど末梢神経障害が問題となる薬剤は多数存在している。しかしながら、抗癌剤起因性末梢神経障害に対する画期的治療薬や予防法は未だに存在せず、鎮痛薬、抗うつ薬、漢方薬など対処療法を行っているのが現状である。近年グレリンの新しい生理活性として神経保護作用が推測されている。本研究は、合成ヒトグレリン補充下での化学療法を行うことで、抗癌剤起因性末梢神経障害を予防する新規治療法確立を目指している。平成28年度の計画はパクリタキセル起因性末梢神経障害モデルマウスを作成し、マウスにおけるグレリンの抗癌剤起因性末梢神経障害予防効果および治療効果を検証することであり、同時に臨床研究としてパクリタキセル投与患者の血中グレリン濃度を測定し、各々の末梢神経障害の程度を評価することであった。マウスモデルについては現在作成中であり、末梢神経障害予防効果については、作成したマウスモデルを用いて今後確認していく予定である。臨床検体についてはパクリタキセル投与患者から随時検体を採取しており、検体がまとまり次第グレリン血中濃度と神経障害の関連を前向きに検討する予定である。過去の検体を用いた予備実験データにおいては既にグレリン濃度と抗癌剤起因性末梢神経障害の重症度が関連した傾向が得られており、今後前向きに集積したデータを詳細に解析することで真の関連性が明らかになると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスモデル作成にあたっては、備品で計上したVonFrey式痛覚測定装置の調達が遅れたため、機器の扱いの習熟に時間がかかり大幅に遅延した。また、前年末に非小細胞肺癌の新規治療薬として免疫チェックポイント阻害剤が承認され、二次治療の標準治療薬として位置づけられたため、殺細胞性抗癌剤に先んじて免疫チェックポイント阻害剤を投与する機会が増えている。そのためパクリタキセル投与患者数が減少しており、臨床検体の集積が予定よりやや遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りに研究を進める。マウスモデルで十分な成果が得られない場合は、グレリン以外に抗炎症作用が確認されている他の薬剤を新たな候補として選定し直し基礎的検討をやり直す必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来測定されるべき臨床検体をストックしており、グレリン血中濃度等の測定を次年度に回したため、繰り越しが生じた。また試薬や消耗品については他の財源ですでに購入済みのものを使用したため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
保存臨床検体が目標数まで集まり次第、次年度に繰り越したグレリン血中濃度等の測定を行う。
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