研究課題
我々はインターロイキン(IL)-27と痛みの関係に注目して研究を行ってきた。IL-27は、T細胞の分化を介してIL-17(痛み誘発作用を有する)の産生を抑制し、IL-10(痛み抑制作用を有する)の産生を増加させることが知られていた。こうした背景を元に我々はIL-27ノックアウト(KO)マウスの行動解析を行い、KOマウスは生来痛覚過敏であることを見出した。この過敏はIL-27を補うことで正常に戻ることから、IL-27は疼痛感度を調節している役割を持つと考えている。また、この作用はT細胞の分化を介していないようである。本研究では、野生型マウスに慢性疼痛モデルを適用し、その病態に対するIL-27の治療効果を調べることを目的としている。神経損傷部位には様々な免疫細胞が浸潤してくることが知られており、IL-27投与によるT細胞分化を介した病態の改善を期待できると考えている。昨年度までにIL-27 4 μgの連日投与により神経障害性疼痛に対する治療効果が得られることが分かった。今年度は、このIL-27の治療効果のメカニズムに脊髄のグリア細胞が関与しているのかどうかを組織学的に検討した。神経障害性疼痛モデルにおいて、その病態形成に重要とされる脊髄後角ミクログリアの増殖を調べたが、IL-27投与群でも対照群と同様の増殖が見られた。また、同様に脊髄アストロサイトの活性化についても活性化マーカーであるGlial Fibrillary Acidic Protein(GFAP)の発現を調べたが、IL-27投与群でも対照群と同様の発現増加が観察された。これらの結果から、本実験におけるIL-27投与の効果は脊髄グリア細胞を介していないか、介していても影響は非常に少ない可能性が示唆された。今後は神経損傷部位に集積している細胞を回収し、IL-17やIL-10の発現に変化があるかを検討する必要がある。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Scientific Reports
巻: vol.8 ページ: 11022
10.1038/s41598-018-29398-3