研究課題/領域番号 |
16K08992
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中山 留美 (直野留美) 宮崎大学, 医学部, 特別研究員 (00609034)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Gタンパク共役型受容体 / 痒み / 痛み |
研究実績の概要 |
オーファン受容体の中でも、Gタンパク共役型受容体の一つであるGPR83が、これまでの研究により痒みの伝達に寄与する受容体であることを示唆されるデータを得ている。しかし、受容体の中枢神経系における発現様式については明らかにされていない。そこで脊髄での他の痒み受容体とGPR83との発現様式の比較について、脊髄から作製したスライス標本での組織染色により検討した。その結果、GPR83は体性感覚の神経線維が終止する脊髄の領域(後角)で発現することが確認できた。具体的には、GPR83や既知の痒み受容体であるGRPR(ガストリン分泌ペプチドの受容体)はいずれも、脊髄の比較的浅い層(表層)への発現が認められた。この結果よりGPR83は、既知の痒み受容体であるGRPRと類似した発現様式であり、神経のマーカーと共発現することから、GPR83は神経細胞に発現する痒み受容体の一つであることが推測される。 また、痛みと痒みの違いを形態学的に解明することを目的として、痛み受容体と痒み受容体との脊髄における発現様式を比較した。具体的には、代表的な痛みの受容体としてサブスタンスP受容体があり、この受容体は脊髄後角の広範囲にわたって受容体の発現が認められる。他方、上述のようにGRPRなどの痒み受容体は、脊髄後角の比較的浅い層(表層)に発現する。これらの脊髄における発現の違いは、体性感覚におけるこれらの感覚の違いを推定されるが、痛みと痒みの伝達系の違いを他の方法でも検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GPR83の形態学的な解析を進め、脊髄でのGPR83の特徴を明らかにすることを目的として、脊髄後角における痒み受容体と痛み受容体の発現を形態学的な解析にて進めてきた。これらの結果より、体性感覚におけるこれらの違いは、伝達に寄与する受容体の発現様式の違いが示唆された。しかし、形態学的な解析だけでは、これらの体性感覚の違いを説明できるとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
今後はGPR83の脊髄より上位にある脳を含めた中枢神経系におけるこれら受容体の発現を解析するだけでなく、これら受容体が発現する部位が、痒みの伝達に対してどのような機能的関連性を有するのかについて、検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に実施を予定していた研究計画のうち、形態学的な解析を優先させたため、計画にあげていた行動学的な解析を十分にすすめることができなかった。 その結果、購入を予定していた、痒み行動測定装置の購入を次年度へ延期することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初購入を予定していた、痒み行動測定装置、およびその機器の増設ユニットを一括にて購入し、効率的な行動解析を進めたい。
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