研究課題/領域番号 |
16K08996
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清水 利彦 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40265799)
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研究分担者 |
鳥海 春樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (30528203)
柴田 護 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60286466)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 皮質拡延性抑制 / 片頭痛 / エストロゲン / プロゲステロン / 性周期 |
研究実績の概要 |
片頭痛は、若年女性に多く、その病態には皮質拡延性抑制 (cortical spreading depression; CSD) と呼ばれる現象が関与している。CSDと性ホルモンの関連を明らかにするため、平成28年度は、野生型雌性マウス(C57BL/6J)を用いて性周期を分類し、KCl投与によるCSD発生閾値の計測を行った。 マウス性周期は膣粘膜の剥離細胞によって卵巣の機能的変化を観察するスメア検査法により、発情前期、発情期、発情後期および発情休止期の4群に分類した。各周期においてCSDを発生させる最小のKCl濃度を測定し、その濃度をCSD発生閾値とした。 CSDが誘発されたKCl濃度は、発情前期0.21 ± 0.04 M、発情期0.26 ± 0.04 M、発情後期0.21 ± 0.04 M、発情休止期0.12 ± 0.04 M であった。また雄性マウスでは0.23 ± 0.05 Mであった。CSDを誘発させるKCl濃度は発情休止期ではCSDが他の3群および雄性マウス比較し有意に低値を示した(P < 0.05) 。 さらに月経周期における性ホルモンの変動とCSD誘発閾値を検討するため発情休止期および発情期で血中エストラジオールおよびプロゲステロン濃度を測定した。CSD誘発閾値が有意に低値を示した発情休止期では、その閾値が高値を示した発情期と比較し、血中エストラジオール濃度は有意に高値を呈した。一方、血中プロゲステロン濃度は有意に低値を示した。さらにこれらの性ホルモン受容体に対する拮抗薬がCSD誘発閾値におよぼす影響についても検討した。その結果、エストロゲン受容体拮抗薬であるタモキシフェンを投与するとCSD誘発閾値は上昇したが、プロゲステロン受容体拮抗薬のミフェプリストン投与ではCSD誘発閾値が低下したことも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究ではC57BL/6マウスの性周期をギムザ染色による膣粘膜細胞のスメア標本の顕微鏡観察により4期に判別した。雌性マウスにおけるこれらの性周期および雄性マウスにおいて、CSDが誘発された最小のKCl濃度をその動物のCSD誘発閾値とし、これら5群において比較検討した。 マウス発情休止期におけるCSD誘発閾値は、雌性マウス発情前期、発情期、発情後期および雄性マウスと比較し有意に低値であることを明らかにした。 平成28年度の研究予定はここまでであった。しかし、発情休止期および発情期で血中エストラジオールおよびプロゲステロン濃度を測定するとCSD誘発閾値が有意に低値を示した発情休止期では、その閾値が高値を示した発情期と比較し、血中エストラジオール濃度は有意に高値を呈し、プロゲステロン濃度は有意に低値を示した。このため平成30年度に予定していた、これらの性ホルモン受容体に対する拮抗薬がCSD誘発閾値におよぼす影響についても平成28年度中に検討した。その結果、エストロゲン受容体拮抗薬であるタモキシフェンを投与するとCSD誘発閾値は上昇したが、プロゲステロン受容体拮抗薬のミフェプリストン投与ではCSD誘発閾値が低下することを明らかにし、当初の計画以上に、性ホルモンがCSDに及ぼす影響について詳細な検討をすすめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
三叉神経における慢性疼痛が片頭痛の病態におよぼす影響を検討する。片頭痛でみられるズキズキする拍動性の痛みは中枢神経系の機能異常とともに三叉神経節における神経細胞の活動性が上昇することにより生じる脳血管や脳硬膜に分布している三叉神経の感作が関係している可能性が指摘されている。三叉神経の感作が生じる原因については明らかにされていないが、ヒスタミン、endothelin-1 、TNFα 、IL-6および leukotrieneなどmast cellに由来する物質が片頭痛患者の血中で上昇し、mast cellからの脱顆粒による物質が脳硬膜の三叉神経の感作を誘発することから、mast cellの関与が一つの誘因として考えられている。しかし、片頭痛発作時の三叉神経節におけるmast cellの変化については明らかにされていない。 そこで三叉神経の慢性疼痛がCSDに及ぼす影響を明らかにするために平成29年度は動物に神経原性炎症を惹起させた際の三叉神経節におけるmast cellの変化を検討する。三叉神経領域の慢性疼痛モデルとしてcapsaicinを皮下注射またはパッチ貼付により前額部へ慢性投与おこなう。その後、三叉神経節を摘出し組織切片を作成したあとmast cellを認識するためc-kitに対する抗体を用い染色し、コントロール群と比較検討することで、mast cellに注目しながら三叉神経刺激のCSD発生におよぼす影響を推進することができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度はCSDに関する生理学的および薬理学的解析を中心におこなった。実験が順調に進行したため試薬などの使用が少量で済んだ。平成29年度は免疫組織化学染色に多種類の一次抗体が必要となるため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は神経トレーサーをもちいた免疫組織化学染色を施行する予定である。この際、トレサーおよび一次抗体購入費として使用する予定である。
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