研究課題/領域番号 |
16K08998
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
萩原 裕子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (90468207)
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研究分担者 |
福島 篤 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10442716)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 疼痛 / 性差 / 分界条床核 / CRHニューロン / ホルマリンテスト / パッチクランプ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで我々が明らかにしてきた分界条床核外側部の痛み反応の情動成分における性腺ステロイドホルモンの役割について、CRH(Corticotropin-releasing hormone)ニューロンに焦点をあて、電気生理学的に検討することにある。CRH発現細胞にてVenus由来の強い蛍光を示すCRF-VenusΔNeoマウスを用いて実験を行い、痛み刺激としてホルマリンテストを指標に行った。雌雄のマウスを用いてホルマリンテストを行い、まず、行動学的な解析を行った。これまでの我々の研究から性差が認められた投与10分後にイソフルラン麻酔下で脳を摘出し、スライス切片を作成しパッチクランプ実験に供した。痛み行動はラットと一致して生食投与群では雌雄ともに痛み行動は示さなかったが、ホルマリン投与により雌雄ともに痛み行動を示したが、雌では雄と比較して有意に痛み行動が強かった。ただちにスライス切片を作成してTTX存在下でシナプス入力を遮断し、ビククリン存在下で蛍光顕微鏡を用いてCRHニューロンを同定し、その電気活動をパッチクランプホールセル法で膜電位固定法により-60 mVに電位を固定して、mEPSC(miniature Excitatory Postsynaptic Current)を検討した。出現したmEPSCはCNQXで完全に消失することからAMPA受容体を介したグルタミン酸の興奮性入力であることを確認した。実験の結果、雌マウスにホルマリンを投与した群でのみmEPSCの頻度が有意に増加することが分かった。現在、性腺ステロイドホルモンを変化させることによる痛み行動とCRHニューロンの変化を電気生理学的に検討中である。また、電位を0 mVに固定してmIPSCも検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パッチクランプ法による電気生理学的な手法により、分界条床核外側部のCRH陽性ニューロンの電気生理学的な特徴と痛みの関係を性差の観点から明らかにしている。今回、パッチクランプホールセル法で膜電位固定法によりmEPSC(miniature Excitatory Postsynaptic Current)を検討し、雌マウスにホルマリンを投与した群でのみmEPSCの頻度が有意に増加することが分かり、概ね順調に実験が行われている。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究により、パッチクランプホールセル法を用いた膜電位固定法によるmEPSC(miniature Excitatory Postsynaptic Current)は、痛み刺激により発火頻度が増加し、それには性差がある事が示唆された。今後、さらに雌雄を比較し、性腺ステロイドホルモンの環境の変化や発達時期による変化などを検討する。また、mIPSCも検討する。最終的に、電気刺激を行い、CRHニューロンのシナプスの可塑性を、AMPA/NMDA比やpaired-pulse、LTPなどでしらべ、AAVを用いてCRHニューロンのみを光刺激して痛み行動における分界条床核外側部のCRHニューロンの役割を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
備品 熱/冷板式鎮痛効果測定装置は別予算での購入検討となった。 また、既存のもので実験が可能となり本年度は購入を見送ったため、差額金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今年度やり残した電気生理学的な解析で、かなりの消耗品の購入が見込まれるのでそれに使用する予定である。また、電気生理システムのインキュベーションシステム(廃液吸引)が老朽化しているので、それを新品交換する予定である。
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