研究課題
アトピー性皮膚炎において、痒みは患者のquality of lifeを最も低下させる症状であるが、特効薬は存在しない。Mas関連Gタンパク共役受容体 (Mrgpr) はヒスタミン非依存性の痒みを媒介する受容体として最近注目されているが、アトピー性皮膚炎などの慢性の痒みに実際関与するかどうかは明らかではない。本研究の目的は、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて痒みにおけるMrgprの役割を解明することである。具体的には、1) Mrgpr発現神経を消失させた場合の掻痒行動に及ぼす影響、2) 内因性Mrgprリガンドの探索、3) 一次知覚神経等を用いたMrgpr応答性解析について検討を行う。最終年度である今年度では、ジフテリア毒素受容体を利用した標的細胞ノックアウト法であるTRECK法により痒みの伝達に重要と考えられているMrgprA3発現神経を消失させる検討を行った。すなわち、MrgprA3発現神経にジフテリア毒素受容体を発現させたマウスに特殊飼料給餌によりアトピー性皮膚炎様のドライスキン症状を発症させた後、ジフテリア毒素を投与した (MrgprA3発現神経が消失する) 。ジフテリア毒素投与群と生理食塩水を投与した対照群との間で痒み行動を比較したところ、自発的な掻痒行動時間に両群間で有意な差は認められなかったが、機械的刺激による掻痒行動 (alloknesis) はジフテリア毒素投与群で抑制されることを明らかにした。現在、ドライスキン症状を発症したマウスにダニ抗原塗布を行うことにより重度の痒み行動を示す新しいモデルを用いて、MrgprA3発現神経消失の影響をさらに検討している。
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http://labo.kyoto-phu.ac.jp/yakuri/index.html