研究課題
神経障害性疼痛では、触覚を強い痛みと感じる「異常」な感覚が生じる。申請者らは、この発症に関連する分子としてBEGAINを同定したことから、本分子あるいはその発現細胞が神経障害性疼痛における病態発症に果たす役割を明らかにすることを目的とし解析を進行中である。本年度ではまずBEGAINの神経細胞内での局在について、BEGAINと前シナプスマーカーであるsynaptophysinおよび後シナプスマーカーであるPSD-95それぞれの抗体を用いた共染色にて解析を実施した。得られたイメージはManders’ overlap coefficient (MOC) を用いて定量的に解析し、BEGAINがシナプスに局在する分子であること、さらにはMOC値よりPSD-95との共局在がより強く示されたことから、多くは後シナプスに存在することを明らかにした。またBEGAINはGluN2BのY1472のリン酸化に依存して脊髄後角で増加することが示唆されていたことから、NMDARのEPSCをBEGAINが局在する脊髄後角II層のSGニューロンから野生型とBEGAIN欠損マウスの両方からそれぞれ測定した。その結果、BEGAIN欠損マウスではEPSCのピークが、野生型に比べ遅延する事がわかった。このことから、BEGAINはin vivoにおいてNMDARと機能的に相互作用することで、病態依存的な異常な疼痛の発症を担い、BEGAIN欠損マウスでは、この機能が阻害されることでシナプス伝達の変化が生じ、痛みの抑制を引き起こすと結論づけた。BEGAINを見出したこれまでの成果、BEGAIN欠損マウスでの行動解析および本年度の成果をまとめて論文発表をおこなった (eNeuro, 3(5) e0110-16. 1-18, 2016) 。
2: おおむね順調に進展している
BEGAINの細胞内局在と後シナプスに存在するNMDA受容体との機能的相互作用を明らかにすることができた。BEGAINの同定、BEGAIN欠損マウスを用いた解析を含めたこれまでの成果と上記の成果を合わせて論文発表をおこなった (eNeuro, 3(5) e0110-16. 1-18, 2016) 。現在、BEGAINの分子機能を明らかにするために、シナプス画分よりBEGAINの相互作用分子の精製を行っており、こちらも順調に進行している。
現在、分子機能の解明を目指しシナプス画分よりBEGAINの相互作用分子の探索を開始している。今後、精製された分子は質量分析装置を用いて同定し、当該分子の機能よりBEGAINのシナプス伝達における役割を明らかにする。さらに、BEGAINのレポーターおよびドライバーマウスの作出を予定している。本マウスの作出によりBEGAIN陽性細胞を蛍光タンパクにより可視化することができ、本申請課題で提案していた脊髄後角におけるBEGAIN陽性細胞の同定が容易、且つ確実になることが多いに期待できる。
BEGAIN陽性細胞の同定を目的として細胞の可視化に伴うin utero EPあるいは、免疫染色における解析を、BEGAINのレポーター及びドライバーマウスを作成することで達成を目指している。よって、そのマウスの作出のための支出として来年度に使用予定である。
現在作成予定のBEGAINのレポーターあるいはドライバーマウスの作出、飼育維持費として使用を予定している。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
eNeuro
巻: 3(5) ページ: 1-18
10.1523/ENEURO.0110-16.2016