研究課題/領域番号 |
16K09003
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小林 希実子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (70418961)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 / 脊髄後角neuron / microglia / 血管内皮細胞 / 血管透過性 / ペリサイト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、末梢神経損傷したDRGと脊髄後角のマイクログリアー血管ー脊髄neuronに着目し、神経障害性疼痛発生過程を解明することにある。我々はこれまでに末梢神経損傷後のマイクログリアでTNF alpha が増加し、それがTNF alpha 受容体(TNFR1, R2)をもつ血管内皮細胞に作用し、この細胞がCox2やPGIS mRNAを増加することでPGI2を産出し、neuronに発現するIP受容体に作用し得ることを明らかにしている。このメカニズム以外にも脊髄後角における複雑な連関が存在することで神経障害性疼痛が発症すると考えられるため、神経障害性疼痛モデルとしてラットを使用し坐骨神経の枝である総腓骨神経と脛骨神経を結紮・切断したSpared nerve injury (SNI) モデルを作製し実験を行った。末梢神経損傷したDRGが投射する髄節にあたる脊髄を様々なタイムポイント(1時間~30日)で取り出し、活性化マイクログリアから血管内皮細胞に作用しうる因子や、それにより血管内皮細胞で増加する疼痛関連因子を半定量的RT-PCR法にて探索した。さらにそれら因子の受容体発現変化についても検討した。 また in situ hybridization(ISH)法にて発現細胞を同定するためにそれらの遺伝子をクローニングしtemplateとなるvectorを作成した。さらに、損傷DRGにおいて増加し、直接脊髄血管内皮細胞に作用しうる因子の候補を見つけることができた。これらの結果を受けて平成29年度は血管透過性に着目して実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた血管に作用しうる因子の候補を見つけることができたため、おおむね順調に伸展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は内皮細胞における接着因子や受容体の発現変化を検討し、末梢神経損傷後に生じうる血管透過性の亢進について実験を行う。 血液脳関門を構成する血管内皮細胞ではtight junctionが形成され、このtight junctionはclaudinやVE-cadherinなどが発現し、機能することで血管からの漏出を抑制している。末梢神経損傷モデルにおいて直接障害されていない脊髄後角でこのtight junctionが機能できなくなる可能性がある。そのため、末梢神経損傷後のclaudin、Zo1、VE-cadherinなどの発現変化をWestern blot法を用いて検討を行う。また各種血管マーカーと二重免疫組織化学法を行い共焦点レーザー顕微鏡を用いてzスタック画像を撮影し、3D構築を行い詳細な血管内皮細胞での発現変化を明らかにする。 末梢神経損傷後のラット脊髄後角において、どのタイムコースで血管からの漏出が起こるかを検討するため、まず最初にビオチン化anti rat IgGや抗アルブミン抗体を使用して免疫化学組織法を行い、血管周囲が陽性になるタイムコースを検討する。さらに詳細に血管透過性を調べるためにFITC、Evans blue等を灌流し、脊髄を取り出し薄切し、基底膜のマーカーであるラミニンで二重染色を行うことで、血管周囲の透過性亢進やどのくらいの分子量の物質が漏出しているのかを組織学的に詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月28日から30日に開催された日本解剖学会の旅費の執行が年度末までにできなかったため次年度決算となった。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に使用している旅費が年度中に間に合わずに持ち越しとなっているためそれに使用する。
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