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2018 年度 実施状況報告書

BNCTに関連した患者体内ホウ素濃度分布の非侵襲的計測機器の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K09010
研究機関筑波大学

研究代表者

安岡 聖  筑波大学, 医学医療系, 講師 (50200499)

研究分担者 熊田 博明  筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30354913)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードBNCT / γ線検出器 / ホウ素濃度 / LaBr3 / 結晶シンチレータ / ホウ素線量 / 即発γ線
研究実績の概要

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)では、加速器を使用して発生させた熱中性子が、患者体内のがん細胞に集中的に集積されるホウ素薬剤中のホウ素10原子と特異的に反応を起こし、熱中性子ががん細胞を選択的に攻撃してその際に発生するα粒子とリチウム粒子がそのがん細胞のみを死滅させられるがん治療法である。この治療法で最も重要な要素に熱中性子の強度とホウ素濃度があり、これらの積は細胞を死滅させる確率に関係するホウ素線量と呼ばれる最も重要な量の一つで、治療計画で決定されたホウ素線量の総量に達するまでの治療(照射)時間の決定に使用する。
治療中にがん細胞内で発生するα粒子とリチウム粒子ががん細胞を死滅させるためのメスの役割を担うのに加え、それらと同反応で同時に発生する特定エネルギー(478 keV)を持つ特定γ線は患者体外に放出され、その発生頻度は治療照射におけるホウ素線量に比例する。この特定γ線の発生頻度を治療中にリアルタイムで測定し、治療照射時間、即ち、総ホウ素線量の精度向上を実現することをこの研究の目的としている。
前年度までに、鉛とフッ化リチウムブロックを用いたテレスコープ型遮蔽コリメータによるγ線と中性子線の高いバックグラウンド計数率の低減、及び、信号の重なり合うパイルアップ現象の解消を実現した。本年度では、更にカドミウムシートによる熱中性子の遮蔽を強化し、照射口直下の標的位置からビーム軸に垂直方向に110 cm離れた位置で、ホウ酸溶液を標的に使用したホウ素濃度計測にて、100 ppmの濃度までの溶液から発生する特定γ線の検出に成功した。
しかし、今年度実施した実験における新たな課題として、γ線のエネルギー測定値が時間と共に僅かにシフトする現象、を確認した。原因は信号読出し回路の温度変化と考えられ、系統的誤差として評価・補正し、ホウ素線量の精度を更に向上させる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実施計画で示したいばらき中性子医学研究センター(茨城県東海村)のBNCT治療用中性子ビームラインを用いた本γ線検出器に対するビーム試験は、加速器側の中性子ビームラインの調整が大幅に遅延し、平成29年9月まで実施できなかった。その後、加速器からの陽子線出射ビーム強度はほぼ安定し、1時間以内にBNCT治療が可能な熱中性子線束が得られるようになった。ビーム試験は平成29年10月より開始され、平成31年3月現在、計11回実施した。開発した2種類(単チャンネルと複チャンネル)のγ線検出器のうち、単チャンネルγ線検出器を用いて、照射室内の中性子及びγ線のバックグラウンド調査を詳細に行った。その結果、鉛とフッ化リチウムブロック、及びカドミウムシートを用いたテレスコープ型遮蔽コリメータを照射口直下の標的位置からビーム軸に垂直方向に設置し、その中のビーム軸から110 cm離れた位置にγ線検出器を設置することで、γ線と中性子線の高いバックグラウンド計数率は低減し、信号のパイルアップ現象は解消し、ホウ酸溶液を標的に使用したホウ素濃度計測にて、100 ppmの濃度の溶液から発生する478 keV特定γ線の検出に成功した。

今後の研究の推進方策

100 ppmのホウ素濃度の検出に成功したが、実際の治療では30 ppm以下のホウ素濃度測定が要求されている。そのため、今後は478 keV特定γ線の幾何学的な検出効率の向上のために検出位置を更に標的に近づけ、それに伴うバックグラウンド計数率の増加に対する対策をする。具体的には、新たに信号の波高値を速く選別、取捨選択可能にする電子回路(Amplifier-Discriminator)の導入で、不要な低エネルギーγ線の早い段階での廃棄と信号幅の短縮化によるパイルアップ発生確率の減少を可能にし、ホウ素濃度の測定可能限界を治療時の想定濃度(30 ppm)まで向上させる。

次年度使用額が生じた理由

BNCT治療用中性子ビームの1年半ほどの整備遅延に伴い、開発したγ線検出器のビーム試験による十分な性能評価を予定通り実施できなかった。更に、予想を超える極めて高いγ線と中性子線のバックグラウンドの発生率をビーム試験で確認した結果、治療で必要とするホウ素10濃度測定の達成には幾何学的な検出効率と信号読出し速度の向上を図った改造が必要となったため、期間延長を行って、性能評価及び改造を実施する。そのために、光電子増倍管に取り付けられたプリアンプの使用有無のスイッチ取り付け、信号幅の短縮化、速い信号波高値の弁別回路モジュールの購入等、に助成金を使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] iBNCTにおけるPG-SPECT装置のためのバックグラウンド計測2018

    • 著者名/発表者名
      南 雄己、安岡 聖、熊田 博明、榮 武二
    • 学会等名
      第15回日本中性子捕捉療法学会学術大会

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公開日: 2019-12-27  

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