研究課題
本研究は、比較的高線量被ばくを伴うX線CT検査を受診する日本人乳児の医療被ばくの実態を、人体ファントムを用いた実測評価に基づいて調査することを目的としている。平成30年度は最初に、定期的に調査を行ってきた小児CT検査の実施状況のまとめを行った。2012年から2016年の5年間にCT検査を受診した15歳未満の小児のCT検査数を年齢、撮影部位ごとにまとめ、経年変化を調べた。0歳児の頭部CT検査におけるヘリカルスキャンモードの選択率の調査では、2012年ではヘリカルスキャンモードの選択率が34%であったのに対し、2016年には74%と5年間で約2倍に増加していることがわかった。そこで本研究で作製した0.5歳児頭-胸部ファントムと蛍光ガラス線量計を用いて、3つの病院において日常的に使用されている頭部CT検査条件における臓器線量を測定したところ、2010年~2011年に測定した結果と比べて設定スキャン範囲外に位置する臓器の線量が比較的高いことが分かった。この理由としては、従来頭部CT検査では、ノンヘリカルスキャンモードを選択していたが、近年のCT装置の時間分解能の向上に伴い、乳児ではヘリカルスキャンモードを選択することが日常的になっているためであると考えられた。しかし、ヘリカルスキャンモードでは、オーバーレンジングの効果により設定スキャン範囲外の臓器の線量が比較的高くなることがわかっており、体が小さな子供においては、その効果は成人よりも大きいことが知られている。このように、本研究結果は、CT装置の技術進歩やそれに伴う撮影法の変更によって患者の被ばく線量が年々変動していることを示しており、定期的な線量評価が放射線防護上重要であることを示唆している。本研究で作製した人体ファントムは、その線量評価をより正確に行うための有力なツールになり得ると考える。本研究内容は現在英文誌に投稿中である。
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Radiation Protection Dosimetry
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10.1093/rpd/ncz031