研究課題/領域番号 |
16K09015
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小寺 吉衞 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (10124794)
|
研究分担者 |
小山 修司 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 准教授 (20242878)
西出 裕子 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 准教授 (80635730)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | マンモグラフィ / フォトンカウンティング / 物質同定 |
研究実績の概要 |
本研究では、最終的に腫瘍や乳腺組織を弁別できるフォトンカウンティングマンモグラフィ装置の開発を目指す。今年度はシミュレーションとスペクトロメータを用いた実測を行い精度について検討するとともに、開発中のフォトンカウンティング検出器を実装した試作機を用いてデータを収集した。初めに、CdTe検出器を用いたスペクトロメータで乳房ファントム、アクリル樹脂、アルミニウムなどの物質をX線で照射して透過後のスペクトルを測定し、得られたスペクトルを三つに分け、それぞれのエネルギー帯域ごとに線減弱係数を得た。さらに、これら三つの線減弱係数から三組の正規化した線減弱係数を求めて三次元表示したもので物質同定の可能性を検証するとともに、線減弱係数と物質の長さを考慮した吸収ベクトル長で、通常の吸収画像とは異なる画像表示を行った。これらのシステムを用いて乳がん患者からの摘出標本の透過スペクトルを測定し、同様の解析法で標本内の乳腺含有率や腫瘍と乳腺組織の鑑別の可能性について検討した。さらに既知の物質を用いて上記の実験を行い、理論と比較することで精度の検討を行った。最後に、新たに開発したCdTe系検出器を実装した実機を用いて摘出標本の物質同定を行った。対象とする腫瘍としては、充実腺管癌、硬癌、浸潤性微小乳頭癌、粘液癌など10症例で行った。正規化した線減弱係数を用いた三次元表示では、異なる物質を異なる位置に表示することができ、物質の弁別が可能であることを示した。また、吸収ベクトル長画像は、通常の吸収画像と比較してSN比の高い画像を得ることができた。摘出標本の解析では、腫瘍と乳腺組織の分離は難しいが、精度を上げることで分離できる可能性が示唆された。これらの結果を三つの国内学会、四つの国際会議で発表し、国際会議で一つの賞を受賞した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進捗している。当初予定していたいくつかのファントム材料に対するシミュレーションによる検証とスペクトロメータによる実証検証は、どちらも計画通りに進んでいる。物質同定の可能性が示唆されたが、精度に与える影響因子の特定や問題などについても有益な情報を得ることができた。乳がん患者から摘出された試料に対する検証では、がんの種類によって腫瘍の三次元分布の位置が若干異なる可能性があるが、現状ではまだ試料の数が少ないことから、今後摘出試料数を増やして検討することを考えている。新しいフォトンカウンティング検出器を用いた試作機は、1号機が開発している会社に、2号機が大学側に設置され、それぞれで稼働中であり同じ条件での比較検討を行っているが、どちらの装置も安定した結果を示している。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度得られた結果を基に、精度に与える因子を解析し、物質同定の精度を上げることをまず考える。さらに、開発した試作機を用いてファントムと摘出試料の画像を得るとともに、表示画像の表示方法についても、これまでの吸収画像以上の画質を持つ画像の提示方法の開発や物質同定による実効原子番号画像の可能性についても検討する。また、乳がん患者の摘出試料についても、がんの種類と試料数を増やし、がんと乳腺組織の鑑別ができるかどうかを検討する。これらの情報を基に、今度試作機の改良を含め、より、臨床に近い装置の開発を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
交付日が遅くなったことで、当初計画していた備品、消耗品等は別途予算で購入した。また、旅費についても、交付日以前の学会、国際会議については別途予算で賄ったことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
国際会議等における研究発表を活発に行う事により、海外において広く研究内容を告知することを考えている。また、物質同定用に新たな材質の購入を計画している。
|