研究課題
現在診断に用いられる一般X線画像の多くは、被写体を構成する物質の線減弱係数と厚さを反映した濃淡画像であり、被写体を構成する物質そのものの材質を同定することはできない。しかし、診断用X線は連続X線スペクトルを用いているため、X線光子のエネルギーを個々に求めることができれば、物質同定は可能である。本研究では、名古屋大学が中心となり、共同研究を行っている株式会社ジョブの開発したプロトタイプのフォトンカウンティングマンモグラフィ装置を用いて、三河乳がんクリニックの協力のもと、乳がん患者の摘出乳房の組成組織の物質同定を行った。解析方法の一部には、同じく共同研究を行っている金沢大学で開発した手法を用いている。また、最適な画質と被曝低減を目指して、ディジタルマンモグラフィに求められる撮影条件を実測とシミュレーションで検討した。摘出標本の解析を行い、摘出標本の乳房組織とがん組織を構成する物体の同定の可能性を検討した。乳房を主に構成する脂肪と乳腺組織については簡単に分離できるが、乳腺組織とがん組織の組成の分離は非常に難しいことで知られている。今回の解析の結果、がんの種類によっては、乳腺組織との分離の可能性が示唆された。しかし、個体間のばらつきが大きく傾向も異なることから、今後、試料数を増やして解析の精度の向上を目指している。物質同定により実効原子番号が得られることから、実効原子番号ごとの画像表示が可能で、吸収画像との重ね合わせ画像(融合画像)による表示を行った。ディジタル画像では、被写体コントラストが低くても画像処理によってコントラストを強調することが可能であり、アナログ画像のように高いコントラストを得るために低いエネルギー撮影する必要はなく、むしろ、高エネルギーで撮影して量子雑音の少ない高コントラスト対雑音比の画像が有効であることを実験とシミュレーションで実証した。
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