研究課題/領域番号 |
16K09020
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
妹尾 淳史 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (00299992)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 拡散MRI / MRIファントム / FA値 / 拡散テンソル / ニューロ解析 |
研究実績の概要 |
本年度はMRI拡散テンソル解析用の定量評価ファントム開発のため,針葉樹,広葉樹,年輪を持たないシュロや孟宗竹,南洋材など合計76種の木材を森林総合研究所から収集し,ファントム材料として木材を評価した.光学顕微鏡により道管や仮道管を観察し,木材を加圧煮沸法および減圧インキュベーション法併用による木材の水分含侵率の計測により,MRI拡散テンソル解析に最適と思われる木材種を6種まで選定した.これらの木材は均一な組織を持ち,道管直径が大脳白質神経と類似していることを明らかにした.またいずれの木材もMRI撮像に必須である水分の浸透に問題がない水分含侵率を持ち,拡散テンソル解析に必要な水分が十分に木材ファントムに均等に分布していることも明らかにした. 大脳白質神経の解析に用いられるMRI拡散テンソル解析において,木材が大脳白質神経にほぼ類似したFA値を持つことが判明した.今年度の研究により選定した木材は,MRI拡散テンソル解析用ファントム材料として有効性が高いであることを明らかにした. ファントムの商用化のためには長期保存性が不可欠のため,今後は選定した木材が腐食しないよう,その処理法について検討する.具体的には ポリエチレングリコール(PEG)処理と,樹脂による密封方法の最適化についてを試みる.PEGによる水分置換や,酸素の遮断により木材腐朽菌の発育を防ぎ,ファントム材料である木材の長期保存が実現可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加圧煮沸法および減圧インキュベーション法併用により木材標本 資料内部に水を浸透させ,含水率を測定した.光学顕微鏡により組織を確認し,道管直径や組織密度を評価した.木材標本資料をMRIで撮像し,ファントムとしての適合を評価した.以上の評価より6種の木材,モミジバフウ,ギンドロ,ヒサカキ,ソヨゴ,イロハモミジ,アカイタヤをファントム材料として選定した.これらの木材は均一な組織を持ち,道管直径が大脳白質神経と類似であるため,MRIによる拡散テンソル解析で人体と同様の測定結果が得られることが判明した.またいずれの木材も,MRI撮像に必須である水分の浸透に問題がなく,解析に必要な水分が得られていることも明らかにできた.現在この研究成果を今年度開催予定の磁気共鳴医学会大会にて発表予定であることから,本研究課題はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は主に選定した木材の防腐処理も包括して検討し,さらに木材種を2-3種まで選定をする予定である.これはポリエチレングリコール (PEG) を減圧により木材内部に浸透させる減圧法と,樹脂による酸素の遮断,密封による防腐処理による含侵率について検討する予定である.木材の腐食は木材腐朽菌によるものであり,木材腐朽菌は適度な温度,水分,酸素により木材組織であるリグニンやセルロースを分解する.将来の商用化を見据えた場合を想定するとファントムを常に一定温度で保管するなどの温度管理は望ましくないため,木材内の水分をPEGに置き換える方法と,酸素を樹脂により遮断する方法の両方法を試みる. このように6種の木材が適切に防腐処理されるかを検証し,結果により防腐処理の最適化と他の木材の利用も視野に入れ評価する.PEG処理や樹脂との相性が木材種により異なる場合,選定した6種の木材以外の木材種も視野に入れて再検討する.昨年度の研究成果は今年度の学会で発表する予定である.適切な防腐処理がなされ,年単位での保存と測定精度を保つことで,商用化が実現可能となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
消費税額などの差額により生じたものと思われます.
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次年度使用額の使用計画 |
該当年度の繰越額は次年度の物品購入費に使用する予定である.
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