研究課題/領域番号 |
16K09022
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
株木 重人 東海大学, 医学部, 講師 (00402777)
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研究分担者 |
櫛田 淳子 東海大学, 理学部, 准教授 (80366020)
西嶋 恭司 東海大学, 理学部, 教授 (40202238)
国枝 悦夫 東海大学, 医学部, 教授 (70170008)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ガンマ線カメラ / 核医学 / コンプトンカメラ / 創薬 |
研究実績の概要 |
従来の核医学ガンマ線カメラで使用されているMLEM (Maximum Likelihood Expectation Maximization)は,データ統計が少ない場合、定量性のある画像の再構成が難しい。本研究ではSOE (Stochastic Origin Ensemble)というアルゴリズムを採用し開発した。SOEはマルコフ過程を用いた再構成アルゴリズムでMLEMより定量性に優れる。 SOEでは、各観測データに対してそれぞれ対応する線源位置の候補を1つ求めて集めた集合stochastic origin ensembles(SOE)を利用して、このSOEの密度が高い部分は線源位置である確率が高いとする。そしてSOEの各線源位置の候補を少しずつ動かし、SOEの密度を、実際の線源位置の分布に近づけていく。一方で、我々が開発している電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)は、従来のコンプトンカメラのようなリング状の再構成ではなく反跳電子の情報を用いて弧状に再構成領域を絞ることが可能である。今回のSOE開発ではETCC 仕様のアルゴリズムを開発した。この手法をシミュレーションで得られた様々なデータに対して検討した。その結果、検出器のエネルギー分解能、位置分解能を入れると像全体でボケてしまい医療で求める画像のクオリティには及ばないが、開発したSOEを適用した結果、ほぼ検出器の理想的な状態まで画像が回復していることが判明した。 また原子力研究所で生成した95-Tc(半減期20時間、766keV)の画像化試験を行った。この核種は臨床使用されている99m-Tc薬剤と化学的性質は同じであるため、人間に対して薬剤の副作用はほぼ同等と考えられ、臨床現場への投入も早いと考えられる。再構成アルゴリズムは今回開発したSOEを用い行った。2方向から撮像し簡易的な3次元の画像を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定であった画像再構成アルゴリズムの開発も予定通り終了し、またMPPCアレイの評価も終えた。シミュレーションによる画像再構成の結果も定量的であることが示せた。 加えて、原子力研究所と実験を開始できた。また今後、更に95-Tcの試験を継続していく予定であるが、核種単体だけでなく、具体的に薬剤の開発も進めるため他大学の薬学部との連携準備を開始し、当初の予定より大幅に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
ハードウェアとしてはカメラのデータ収集高速化を進める。ソフトウェアとしてはシミュレーションによる画像再構成の精度評価を行う。また平行して新しい核種候補である95-Tcの撮像試験を継続する。また薬学部と共同で薬剤としての95-Tcの画像化試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の開発は主に画像再構成アルゴリズムであった。この開発費用は予定通りであったが昨年度からの繰越分があったため、ほぼ同等の額を繰り越すこととなった。 次年度は最終年度であるため学会等での成果発表、また他機関での実験時の運送費に充てる予定である。
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