研究実績の概要 |
当該年度においては、まず、磁気共鳴スペクトロスコピー(以下、1H-MRS)による脳代謝物質の測定の精度(quality control)を多様なパラメーターを用いて安定化させた。次に、ボクセル内の構造を脳脊髄と灰白質、白質に分割化し、関心領域の脳脊髄比を算出することを可能にした。この脳脊髄液比を用いて代謝物質の濃度を調整することで、脳実質内の代謝物質を測定することが可能となった。以上の測定における技術の工夫によって、安定的な撮影環境が強固となり、撮影から解析までのパイプラインが一通り整えたと考える。予備データのクオリティチェックを行い、本格的なリクルートを開始することにした。論文としては、未治療の統合失調症患者において脳内では有意なグルタミン酸濃度の異常が認められないこと(Iwata, Nakajima, et al. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2018)、慢性期の統合失調症患者において脳内ではグルタミン酸濃度に異常を認めないこと(Plitman, Nakajima, et al. Int J Geriatr Psychiatry. 2018)、治療抵抗性の統合失調症においては脳内ではグルタミン酸が増加していること(Iwata, Nakajima, et al. Biol Psychiatry. 2018)、統合失調症において中枢・末梢のグルタチオンが減少していること(Tsugawa, Nakajima, et al. J Psychopharmacol. 2019)を発表した。以上の研究結果は統合失調症患者の病態の多様性を示唆し、本研究の目的である統合失調症患者の脳内GABA濃度を測定することの意義を支持すると考える。
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