研究課題/領域番号 |
16K09025
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
尾川 浩一 法政大学, 理工学部, 教授 (00158817)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | SPECT / コリメータ / ピンホール / モンテカルロ法 / ガンマカメラ |
研究実績の概要 |
マルチピンホールコリメータの設計におけるパラメータの最適化:当初の計画では、ピンホールの数を8として、研究計画を立てていたが、実際にガンマカメラに装着する場合、中心合わせなどの操作が困難になることが予想され、ピンホール数を8~11の範囲で実装できるパラメータを検討した。内容としては、孔を通過したガンマ線による投影データが重ならないという条件の下で、孔の位置、開口角、向きなどを最適になるように光線追跡法を用いたシミュレーションから検討した。 マルチピンホールSPECTの画像再構成法の開発:画像再構成手法として最尤推定期待値最大化法を採用した。この画像再構成法では、物理現象を再構成のプロセスに組み込み補正することが可能であり、空間分解能補正、ガンマ線の減衰補正、散乱補正、感度補正などを組み込んだ。また、オーダード・サブセット法などを活用した高速再構成法を実装した。 モンテカルロシミュレーションによる感度と画質の検討:実際とほぼ同様の系でのモンテカルロ法による光子輸送シミュレーションを行った。光子輸送シミュレーションではGPGPUを用いて、計算時間の短縮を図った。また、感度の影響を定量的に評価するために、ピンホールの径を様々に変えて、空間分解能、アーチファクト、統計雑音等の観点から検討を行った。 脳SPECT用マルチピンホールコリメータおよび装着治具の設計、製作と基礎実験:脳SPECT用マルチピンホールコリメータを設計、製作し実験を行った。このシステムでは、孔の数を8個として空間分解能を重視した設計とした。実験では、空間分解能ならびにコントラスト分解能ファントム、Hoffman脳ファントム(京都科学社製)等を利用した。今回、予算の関係で回転軸精度を調べる治具は作製することができなかったので、実測された点線減の投影データから回転軸補正を実現させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した、4つの項目について自己点検を行った結果を示す。 モンテカルロシミュレーションによる感度と画質の検討に関しては、当初、ピンホールの数を8個とする形態を基本としていたが、シミュレーション上では孔の数は自由に設定できるものの、実際の装置に装着して種々の補正を実施するうえでは、ガンマカメラの中央に1つ孔があったほうが便利なため、ピンホールの数を8~11としてシミュレーションを行い、所定の検討を行った。 脳SPECT用マルチピンホールコリメータおよび装着治具の設計、製作と基礎実験に関しては予算の関係で回転軸精度を調べる治具は作製することができなかったので、実測された点線減の投影データから回転軸補正を実現し、基礎実験を成功させた。 マルチピンホールコリメータの設計におけるパラメータの最適化に関しては、特に問題も生じず、研究を遂行することができた。 マルチピンホールSPECTの画像再構成法の開発についても、ほぼ計画どおりに実施することができた。これらのことから、当初の計画とは若干変更はあったものの、検討すべき内容に影響を与えなかったので、概ね研究計画にそった研究を行い成果が得られたものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究実施内容は以下のような項目である。 1.心筋SPECTシミュレーションとマルチピンホールコリメータの設計、製作および基礎実験:心臓はSPECTシステムの視野の中心に位置していないので、SPECTデータ収集のために、ピンホールの孔の位置や向きを変更して効率よくデータ収集する必要があるか、否かを検討する。また、心筋の映像化の場合には、肝臓等に集積した放射性同位元素が再構成画像に擬似集積を発生させる可能性があるので、心筋以外の集積部で発生するガンマ線の影響を低減する方法を検討する。これらの詳細なシミュレーションの結果に基づき、必要であればコリメータの設計と製作を行い、SPECT装置に装着し基礎実験を行う。実験には心筋ファントム(京都科学社製)を用いる予定である。 2.GPUを用いた画像再構成計算の高速化:逐次近似形の画像再構成において問題となる計算時間を短縮するために、グラフィックプロセッサ(GPU)を用いた並列計算プログラムを開発する。 3.マルチピンホールSPECT画像の画質の改善と動態解析法の開発:SPECTではガンマ線の吸収、散乱、コリメータの開口などの影響により、再構成画像の画質が低下するので補正法を再度見直す。ガンマ線の吸収に関してはX線CT画像を用い、散乱線の補正に関してはTEW法を利用する予定である。さらに、コリメータの孔の影響の補正に関しては、円形ぼけのパターンをデコンボリューションする方法を検討している。また、同時に3次元動態画像の再構成法および動態解析法を開発する。現在、考案しているのは、リストモード型の逐次近似画像再構成法である。
|