平成30年度はマルチピンホールSPECT画像の画質の改善と動態解析のための時間放射能曲線の取得に関して研究を行った。ここで画質の改善に関しては、ガンマ線の吸収、散乱、コリメータの開口の補正の他、量子雑音の低減などを実施した。この結果、ピンホール開口の影響に関しては7rays法などの補正法を用いたが、結果的に十分な補正効果が得られず、他の補正結果にも影響を与えるので、さらに効果的な方法を開発しなければならないことが明らかになった。ピンホールコリメータを用いたリストモードデータ収集に関しては、シミュレーションによって再構成画像から時間放射能曲線を描くことに成功した。リストモード再構成画像に関しても、おおむね画質は安定したが、想定した定量性は一部得ることができなかった。これは前述のピンホール開口補正が十分な効果を示さなかったことに起因しており、今後、取り組む必要があると考える。 研究期間を通じ、マルチピンホールコリメータを用いた3検出器型の検出器固定状態でのSPECTシステムの提案とそのコリメータ設計、製作および基礎実験ならびにGPUを用いた画像再構成計算の高速化を行った。対象臓器は脳と心筋であり、両者についてシミュレーションを実施して、ピンホールSPECTシステムの設計上の様々なパラメータが再構成画像の画質にどのような影響を与えるかを明確にした。また、マルチピンホールコリメータによって実施可能となる臓器の動態解析についても時間放射能曲線を得ることに成功した。
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