研究課題/領域番号 |
16K09029
|
研究機関 | 秋田県立脳血管研究センター(研究部門) |
研究代表者 |
加藤 守 秋田県立脳血管研究センター(研究部門), 放射線医学研究部, 特任研究員(内部) (10595573)
|
研究分担者 |
千田 浩一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20323123)
盛武 敬 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 准教授 (50450432)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 患者被ばく線量 / 蛍光ガラス線量計 / 心臓CTの最大被ばく部位 / PCIの最大皮膚線量 / 患者線量測定装具 / 臓器線量 |
研究実績の概要 |
冠動脈形成術(PCI)および診断血管撮影における線量の最適化に向け,蛍光ガラス線量計をもちいて多数の患者被ばく線量を実測し背部の最大皮膚線量を評価した.放射線皮膚障害に特に注意が必要なPCIにおいて,5施設175症例で線量実測を行った結果,最大皮膚線量の最大値は6.5Gy,平均は1.4±1.1Gy, 中央値は1.0Gyであった.PCIは高線量を要する手技となるため,十分に注意が必要である.また,最大皮膚線量は装置表示の積算空気カーマと強い相関を示した(相関係数r=0.89).更に一次回帰式から最大皮膚線量は装置表示の積算空気カーマの約1.1倍と推定できた.このことから,蛍光ガラス線量計を所有していない施設でも,最大皮膚線量を装置表示値から推定可能と思われる.一方,X線の射出側となる乳房表面での線量は平均17.8mGyと低かった.しかし,CTなどの他のモダリティで検査を受けた場合,線量を合算して管理する必要があり,注意が必要である. 心臓CTと他部位のCTで大きく異なる点は,照射線量にある.心臓CTは細いビーム幅で細かく撮影するため患者の被ばく線量が多く,更に心臓をCT中心で撮影するため,ボウタイフィルタなどの影響で理論的に胸部前面(乳房表面)が最大線量となる.本研究では蛍光ガラス線量計と開発した心臓CT用線量測定装具,胸部人体ファントムを用いて心臓CT時の線量測定を行った.結果,ファントム位置をCT中央に設置した場合,ファントム前面後面の線量はほぼ等しく約100mGyであった.一方,ファントムをCT中央から2cm下げ心臓中心に設置した場合,ファントム背面が80mGy,前面が120mGyと高線量となった.放射線感受性の高い乳房の被ばくには十分注意する必要がある.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管撮影装置の表示値から背部の最大皮膚線量を推定することができた.また,乳房表面線量も同様に推定可能であった. 心臓CT用線量測定装具を改良し,心臓CTファントム実験を行った.結果,背部・前面(乳房表面)の表面線量は容易に測定可能であった.心臓CTの際,心臓をCT中心に設置するため,通常より寝台が約2cm下方になる.2cmの差は画質には大きく影響を及ばすことはないが,胸部前面(乳房表面)の線量が20~30%高くなる.一方背部皮膚線量は低減されるため,PCIなどが関連して行われる場合,PCIと心臓CTの総合的な被ばく線量は低減されることになる.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度はファントムの改良を予定していたが,ファントムメーカと相談したところ,ファントム体軸方向に線量計挿入用に穴を空けることは,ファントム形状を保持できない可能性があるということでメーカによる改造は行わなかった.今年度はファントムの一部のみに穴を空けるなどのを改造を行い臓器線量を測定する. 臓器線量は実測できないが,ファントムを使用して測定する.CT装置と血管撮影装置のメーカ・機種によって特徴(実効管電圧等)が異なるため,多メーカの装置を使用してファントム実験を行う.得られたデータを解析し,関連学会(日本放射線技術学会,日本インターベンショナルラジオロジー学会,日本心血管インターベンション治療学会,欧州放射線学会など)にて成果発表を行い,意見交換を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
ファントムの改造を予定していたが,メーカの都合で来年度以降の改造に計画を変更した.
|
次年度使用額の使用計画 |
患者被ばく線量測定用装具の開発・購入を予算計上した.装具は多施設で使用するために複数購入する.また,測定に使用する線量素子(蛍光ガラス線量計)の購入を計上した.収集データを2Dまたは3Dマップ表示させるソフトの開発をするために,専門的知識の提供を予算計上した.関連学会での発表および意見交換のための旅費を予算計上した. 次年度使用額は,今年度の研究効率を推進したことに伴い発生した未使用額で,次年度請求額と合わせ研究遂行に使用予定である.
|