研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)や原子力放射線施設における作業環境場などにおいて、0.5eV~10keV領域の中性子測定の精度向上が求められている。これまでは、金放射化やHe-3ガス検出器など熱中性子検出器の延長戦上で熱外中性子を測定していたが、中性子反応断面積の精度は熱中性子領域に比べて悪く、精度向上には限界があった。そこで、本研究では、熱外領域で核反応断面積に依存しない中性子測定法の開発を試みた。検出器は、ホウ素10を含有したLGBシンチレータとガンマ線測定用のBGOシンチレータによって構成される。2つのシンチレータを用いて、10B(n,ag)反応によって生成されるα線とガンマ線を同時測定すると、BGOで観測できる10Bからのガンマ線の検出効率が求められる。次に、熱外中性子に対して全吸収できる厚い10B試料をLGBシンチレータの代わりに設置すると、試料に入射した全中性子の量が求められる。 この検出器について、京都大学電子ライナックを用いた熱外領域を含む白色中性子源を用いて、中性子飛行時間法によって検出器特性の実験を行った。検出器は中性子源から12mの位置に設置し、パルス周期50Hzの条件で実験を行った。その結果、LGBシンチレータとBGOシンチレータの同時計数測定によって、10Bから生成される478keVガンマ線に対するBGOシンチレータの検出効率が、中性子エネルギーに依存せず一定であることが示された。したがって、全吸収10B試料を用いることによって、核反応断面積に依存せず中性子フルエンスの測定が可能なことを原理的に示すことができた。今後、試料の体積に起因する補正など技術的改善を行い、検出器校正に利用される24keV単色場への応用が可能になると考えられる。
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