研究課題
日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)参加地区のうち、ピロリ菌抗体価、血清ペプシノゲン値を測定した4地区(大幸、愛知がん、岡崎、京都)の遺伝子型測定(genotype)データと疾患形質(phenotype)データを用い、ヘリコバクターピロリ感染の有無、ピロリ菌関連萎縮性胃炎、及び、血清ペプシノゲン(PG)値に関するゲノムワイド関連解析(genome-wide association study、GWAS)及び、SNP-set解析(SNP-set Kernel Association Test: SKAT)を施行した。上記対象者3,385名のうち、ピロリ菌抗体陽性者は1,239名、うち萎縮性胃炎(GA)は479名、重症萎縮性胃炎(sGA)は120名であった。解析の結果、境界有意水準である、P<5x10^-5を満たした遺伝子多型について、独立した愛知県がんセンターの2,000名、及び885名のデータセットを用いて再現性の検証を行った。その結果、8q24.3領域のPSCA(prostate stem cell antigen)遺伝子の、胃がんGWASにおいて既報のPSCA rs2294008遺伝子多型と、同遺伝子座内の、連鎖不平衡(LD)にある多型が、GA、sGA、PG 1/2比と、ゲノムワイド有意(P<5x10^-8)な関連を示した。今回の研究は、ピロリ菌関連GAのGWASでPSCA遺伝子多型がゲノムワイド有意にGA発症リスクと関連することを示した初の論文であり、今後の東アジア及び世界における、ピロリ菌関連胃がん・萎縮性胃炎の予防に関する疫学・基礎研究や、予防の実践において有用な知見を発信することができたと考えている。
3: やや遅れている
上記ピロリ菌関連萎縮性胃炎に関する、再現性検証を含めたGWASの解析、成果報告に時間を要し、また、他施設間の共同研究の特性もあり、新規発症の胃癌症例の追跡調査による把握や解析データの準備に時間を要したため、胃癌に関するGWASの測定、萎縮性胃炎に関するSKATの論文成果発表が現時点で未施行である。
今後は、ピロリ菌関連萎縮性胃炎の遺伝要因に関するSKAT解析の残りの成果報告と、胃癌罹患症例を含めたGWAS、SKAT解析を期間内で可能な限り進める予定である。
期間内に研究が完結するよう努めるも、多施設間共同研究の特性上、データの集計と解析に予定外に時間を要し、ピロリ菌関連萎縮性胃炎に関するGWAS・SKAT解析の論文成果発表、及び、ピロリ菌関連胃がんに関するデータ集計・解析については、現在、鋭意準備・施行中である。
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Carcinogenesis
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doi: 10.1093/carcin/bgz016