研究課題
本研究では、救命救急センター等に搬送された院外心停止患者の多施設共同前向きレジストリを用いて、『院外心停止患者の救命率改善のための治療戦略として、心停止患者のバイオマーカーの測定評価ならび高度集中治療の有効性の検証』することを目的とする。研究3年目となる平成30年度には、研究代表者ならびに研究協力者は、平成24年(2012年)7月~平成28年(2016年)12月までの4年半で解析可能な8,721件のデータセットを構築した。このデータを用いて、病院搬送後に院内で蘇生行為が実施かつ自己心拍再開が得られた成人心原性1,516症例を対象に病院到着時のカリウム測定値と院外心停止発生1か月後の社会復帰割合との関係を評価した。カリウム値が高ければ高いほど社会復帰割合は低くなり、カリウム値を4群に分けて最も低い群と比較し、カリウム値が最も高い群の院外心停止発生1か月後の社会復帰は0.3倍低いことを明らかにした。また、病院搬送後に院内で蘇生行為が実施かつ自己心拍再開が得られた非外傷性2,894症例を対象に病院到着後のIABP(intra-aortic balloon pumping:大動脈内バルーンポンピング)使用有無と社会復帰割合との関係も評価した。IABPは対象症例の約10%に施行されており、IABP使用有無と社会復帰との関係を評価する統計手法として傾向スコアを用いて群間のバランスを調整することができる解析を実施し、IABP使用群と非IABP使用群との間において、院外心停止発生1か月後の社会復帰に違いは認められなかった。研究はおおむね順調に進んでおり、上述の2つの解析結果は欧米の学術雑誌に現在投稿中である。本研究では、毎年約2000件の症例集積を継続しており、その他のバイオマーカーや病院搬送後の院外心停止患者に対する高度集中治療の有効性についての詳細な解析を引き続き実施する予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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