日本人に比し生活習慣の欧米化した日系米人において、肥満や耐糖能異常によるグルカゴンやインクレチン分泌の変化を調べた。 糖尿病の既往がなく、現在治療中でもない、ロサンゼルス在住の日系米人138名に、75gブドウ糖負荷試験(OGTT)を施行し、血糖値、血清インスリン値、血漿グルカゴン値、血漿Glucagon-like peptide-1(GLP-1)値、血漿Glucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)値を測定し、耐糖能別に正常群(119名)、境界群(12名)、糖尿病群(7名)の3群に分類し、糖負荷に対する各ホルモンの血中濃度の変動を比較した。空腹時血漿グルカゴン値及びOGTTにおける血漿グルカゴン濃度-時間の曲線下面積は、正常群、境界群、糖尿病群の順に高くなり、正常群に比し糖尿病群は有意に高かった。血漿GLP-1値と血漿GIP値は3群で差異を認めなかった。 続いて、正常耐糖能群を肥満の程度(Body mass index: BMI)別に、BMI<22群(37名)、22≦BMI<25群(46名)、BMI≧25群(36名)の3群に分け、同様の検討を行った。血漿グルカゴン値は、空腹時は、BMI<22群より22≦BMI<25群が、さらに22≦BMI<25群よりBMI≧25群が高値であり、OGTTにおける血漿グルカゴン濃度-時間の曲線下面積は、BMI≧25群では他の2群に比し有意に高値であった。血漿GLP-1値と血漿GIP値は3群で差異を認めなかった。 本研究の結果から、ごく初期の糖尿病群や境界型の耐糖能異常群、さらには正常耐糖能群であっても肥満があれば、空腹時の血漿グルカゴン値が高いことが示された。すなわち、空腹時の血漿グルカゴン濃度は糖尿病発症の予知マーカーとして有用であることが示唆される。
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