2018年度は1)前向き無作為割付試験ではHDLの機能をHDLの粒子径の変化として捉えて検討を行った。HDL粒子は小粒子HDL3と大粒子HDL2に分類されている。EPA投与群では有意なHDL3の低下とHDL2/HDL3比の増加が認められた。EPA投与後6ヶ月のEPA/AA比はHDL2/HDL3比と正の相関関係を示しており、EPA/AA比の変化量はHDL2/HDL3比の変化量の独立した正の予測因子であること示した。EPA投与によってHDL粒子の小粒子化を認め、EPAの抗動脈硬化作用である可能性が示唆された(論文投稿中)。更にHDL粒子の評価法としてゲルろ過HPLC法によって詳細なHDLサブクラスの検討を行なった。EPA投与群ではsmall HDLの粒子径と粒子数の減少が認められた。(論部執筆中)。 2)縦断試験では血清DHA濃度の増加はHDL粒子の小粒子化の予測因子であったが、血清EPA濃度の変化はHDL粒子径の変化の予測因子とはならなかった。本結果は2017年度にin pressであったが、2018 年に論文として公表されている(Heart Vessels. 2018;33:470)。縦断試験と前向き無作為試験の結果は一致しなかったが、n-3系多価不飽和脂肪酸のHDL粒子の機能の向上作用を示したことは有意義であると思われる。 本研究の目的は1)HDL-Cは量的変化よりも機能の向上が抗動脈硬化作用に関与することが示されている。2)魚類に含有されるn-3系多価不飽和脂肪酸である(EPA)は動脈硬化性疾患の発症抑制に関与している。以上を研究背景とし2つの研究手法(無作為割付試験、及び縦断試験)を用いてEPA のHDLの機能に及ぼす効果を明らかにし、EPAの冠動脈疾患の予防効果を検討することである。よって本研究によって得られた結果によっておおよその目的は達成できたと考えられる。
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