研究課題/領域番号 |
16K09054
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
関 泰輔 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (20528822)
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研究分担者 |
今釜 史郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40467288)
長谷川 幸治 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 教授 (50208500)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動器 / 骨粗鬆症 / 住民健診 / 低栄養 / 認知症 |
研究実績の概要 |
H29年度も引き続き、北海道八雲町住民検診(Yakumo Study)に参加し、約600名の検診者に対して、整形外科として運動器検診を実施した。内容は重心動揺検査、腰膝X線検査、骨密度検査、ロコモ検診、筋量計などである。また検診者のQOLについて、質問票を用いて評価した。他のグループも生活習慣問診、内科的検査、血液検査、さらに認知機能、排尿障害、眼底検査などを行った。本年度も継続して酸化ストレス・抗酸化能を測定するために、検診者の血清を約1ml採取し、凍結保存を行ったうえで、今後の解析のために保管している(一部解析は終了)。今回、高齢化に伴い運動機能障害、低栄養、認知症は重要な課題であることに注目し、本研究データから運動器疾患に影響する骨密度と低栄養状態、QOLについて検討した。 対象は、2016年度Yakumo Studyに参加した555名のうち、超音波法による踵骨骨密度検査を実施した367名(平均年齢63.6歳、女性231名)である。骨粗鬆症はYAM値70%以下とした。膝OA、重心動揺、ロコモ評価、栄養として血清Hb, Alb値、認知症評価として言語流暢性、記憶力、注意力などの因子を検討した。 結果、骨粗鬆症は107名で、OP(-)と比べ有意に平均年齢が高く(67.4 vs 62.7歳)、TUG testが遅かったが(6.28 vs 5.90秒)、膝OA、骨折既往、重心動揺には有意差がなかった。SF-36は、RCSのみ有意にOP(+)で低値であった(48.7 vs 53.8)。またOP(+)はロコモ25で低い傾向あり、栄養としてHb値は有意に低かったがAlb値は差がなかった。認知症の評価や糖尿病の項目は関連しなかった。OP(+)のRCSを従属変数として重回帰分析を行った結果、ロコモが有意な因子として同定された。 骨粗鬆症は役割社会的側面のQOL低下と関連し、ロコモティブシンドロームが影響する因子であった。ロコモに対する対策は骨粗鬆症患者のQOLを高め、運動器疾患を予防できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検診者の血清を採取し、安定的に保管できている。酸化ストレス・抗酸化能を測定する機器において、現在一部解析を行っている。他の因子、整形検診データ以外の内科データ等を参照に、さまざまな方面から多面的に関連する因子を同定する予定である。そのために、統計解析、データ整理と統合を慎重に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も同様に、住民健診Yakumo Studyに参加する予定である。酸化ストレス・抗酸化能を測定するために、生化学チーム、他のグループとの会合を持ち、必要物品の確認、手順のすり合わせを5月に行う予定である。データのとりまとめを行い、統計解析を加えて運動器疾患に影響する因子の同定と、予防に向けた方策を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)酸化ストレス・抗酸化能の測定のため、検査に必要な試薬を購入している。試薬は50セットで一つのパックとして購入するものであり、一部端数の金額は翌年度に使用とする。 (使用計画)H30年度も同様に八雲検診に参加し、血清を採取する予定である。これらの酸化ストレス測定を行うために、H29年度と同様に試薬を購入する予定である。
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