血管内皮はエンドセリンや一酸化窒素NOを産生し、血管収縮・拡張に重要な役割を果たす。血管内皮機能障害は粥状動脈硬化の発生やプラーク破裂と関連する可能性が基礎研究で示されており、血管内皮機能を評価することは動脈硬化や循環器疾患の高リスク群を抽出し、一次予防に役立つ可能性がある。しかし充分なエビデンスがない。近年、非侵襲的かつ比較的簡便な血管内皮機能検査が保険適用となった。本申請課題は日本人一般地域住民女性コホート研究において血管内皮機能を評価し、潜在性動脈硬化や腹部脂肪蓄積との関連、血管内皮機能障害の背景要因を解明する。 申請者らは、平成27年より、潜在性動脈硬化および認知症の疫学研究(SESSA Women)のベースライン調査を実施している。本申請課題では、この調査の参加者(60歳-85歳)を対象に、血管内皮機能検査を追加実施する。合計約400人を予定する。 令和1年度は、前年度に引き続き、SESSA-Women の参加者にEndo PAT 2000による血管内皮機能検査を実施した。結果、本研究期間中に合計407人の血管内皮機能検査を完了できた。Reactive Hyperemia. Peripheral Arterial Tonometry Index(RHI)の年代別の平均値に統計的に優位な差を認めず、RHI 1.67以下の割合にも統計的な優位差を認めなかった。古典的循環器疾患危険因子と血管内皮機能との関連の検討では、RHIは、拡張期血圧、脈拍、BMI、血糖値と負の関連を認めた。
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