研究課題/領域番号 |
16K09068
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小谷 和彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (60335510)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | HDL / LDL / 脂質異常症 / 脂質代謝 / 高コレステロール血症 / 心臓病 / 酸化ストレス / 酸化HDL |
研究実績の概要 |
高密度リポ蛋白(high-density lipoprotein:HDL)コレステロール(cholesterol:HDL-C)の血中濃度は抗動脈硬化指標とされているが、最近、これに相反する見解がみられるようになってきた。すなわち、HDL-CやHDLに対する認識は新たなステージを迎えている。本研究課題では、HDLの構成アポ蛋白やHDL粒子サイズによるHDL不均一性に鑑み、HDLの2大構成蛋白であるアポA-IとアポA-IIが粒子サイズに関連することに着目して、申請者らが開発したサイズ関連酸化HDL(HDLに関する新規質的指標)の測定意義について検証する。今年度は、血液試料の扱いを含めた検査測定系の検討を進めた。安定して測定できることを繰り返して確認した後に、以下のような臨床的成果を得た:心臓病保有集団(32人、男性59%、平均72歳)と対照集団(31人、男性45%、平均72歳)において一般脂質検査とサイズ関連酸化HDLを測定したところ、心臓病保有集団と対照集団との間に一般脂質検査レベルの差はみられなかった(p>0.05):low-density lipoprotein cholesterol(平均値)=121対122 mg/dL、HDL-C(平均値)=65対69 mg/dL、中性脂肪(中央値)=94対112 mg/dL。心臓病保有集団は対照集団よりも小型サイズ関連酸化HDL(中央値)が有意に高値を示した(p<0.01):0.6対0.4(×10U/mL)。心臓病保有下では、小型HDLの質的変化の存在が示唆された。この新規質的指標を用いて、更に多様な集団で多面的な検討を行ってHDLの理解を深め、併せて予防医学や臨床医学の現場でのHDLの質的管理について提案することを目指したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、HDLに関する新規の質的指標(サイズ関連酸化HDL)を用いて、その測定意義について検討し、HDLの理解を深め、もって予防医学や臨床医学の現場でのHDLの質的管理について提案することを目指している。この新規質的指標においては、開発段階でHDL粒子サイズとの相関性や検査測定系の安定性を予備的に検討してきた。しかし、今年度になって血液試料の扱い(保存)によっては測定値に影響の出ることが判明し、安定して測定できる条件をあらためて設定した。このため、当初の計画よりも、諸検査の測定が滞り、予算の執行も含めた遅れが発生した。
|
今後の研究の推進方策 |
HDLに関する新規の質的指標(サイズ関連酸化HDL)の測定条件が確立し、本研究課題の目的達成の態勢は整った。また、対象者の集積も進んできている。よって、検査の測定を順次、進めていけば、初年度の計画の遅滞をもって、大幅な研究計画の見直しは必要ないと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では、HDLに関する新規質的指標(サイズ関連酸化HDL)の測定を行うが、研究開始後に血液試料の扱い(保存)によっては測定値に影響の出ることが判明し、安定して測定できる条件をあらためて設定し直した。これに時間を要し、当初の計画よりも、諸検査の測定が滞り、検査費用をはじめとする予算の執行に遅れが発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
現在、HDLに関する新規質的指標(サイズ関連酸化HDL)の測定条件が確立し、本研究課題の目的達成の態勢は整っている。また、対象者の集積も進んできている。よって、諸検査の測定を順次、進めていけば、大幅な研究計画の見直しをしなくとも、初年度の遅れは取り戻せると考えている。
|