研究課題
脳・心血管疾患の発症率には地域差があることが知られているが、主要な原因である動脈硬化所見やその進展要因の地域差についてはあまり明らかにされておらず、その解明は公衆衛生上の課題である。潜在的な動脈硬化を非侵襲的に把握する手法として脈波伝播速度を用いる方法が普及しているが、その中でもCardio-Ankle Vascular Index (CAVI)は、気温や心理的なストレスによって大きく変動する計測時の血圧値の影響を受けない指標である。本研究は、1)生活習慣の異なる都市部(神戸)と離島(鹿児島)のCAVIを比較して、その規定要因としての想定される様々な危険因子の影響が異なるかどうかを比較・検証する、2)大規模な健診受診者集団においてCAVIの推移を経年的に調査しその上昇に寄与する危険因子を明らかにする、の二つの研究で構成されている。2018年度は、研究2)に関して、全国職域健診における喫煙のCAVI9.0以上の発症に対する相対リスクを推定し、集団に対する影響を人口寄与危険割合(Population attributable fraction: PAF)を用いて検討した。全体の追跡期間の中央値は4.9年、ベースライン時点における平均年齢は47.2歳±8.6歳(男性45.4歳、女性47.9歳)、CAVI9.0以上は698例発症した。ハザード比は女性の喫煙群1.56 (95% confidence interval (CI): 1.11-2.21)、男女計の喫煙群 1.27 (1.01-1.60)であった。新規CAVI9.0以上の発症におけるPAFの推定は、女性の喫煙群2.82%。男女計の喫煙群で3.69%であった。男性はハザード比に有意差を認めなかった。職域健診受診者において特に女性の喫煙集団では、動脈硬化性疾患の指標であるCAVI9.0以上のPAFが約3%高いことが示唆された。
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