健康の社会的格差・健康格差が注目され、その縮小が健康政策・公衆衛生の重要な課題となっている一方、健康づくり施策が健康の社会的格差に与える影響(縮小あるいは拡大)が注目され始めた。そこで、本研究は、(1)国内外の先行研究のレビュー、(2)国内の既存のデータから健康の社会的格差の経年変化と健康づくり施策の影響の検証、(3)地域や職域を対象にした健康づくり施策の健康の社会的格差への影響(前向き研究)により、健康づくり施策の健康の社会的格差への影響を検討する。これによって、どのような健康づくり施策が健康の社会的格差の縮小につながるか(あるいは拡大させるか)を明らかにし、健康の社会的格差を縮小させつつ、集団の健康状態を向上させる健康づくり施策のあり方を提言することができる。 これまで行った国内外の論文・研究についてのレビューの収集と分析をもとに、総論の発表と関連テキストの執筆を行った。既存パネルデータ等の分析として、J-HOPEのデータを用いて、分析を行い、論文発表を行った。また、共済組合の健診および保健指導等のデータによる解析を行い、担当者への研修会で発表を行った。 地域や職域を対象にした健康づくり施策の健康の社会的格差への影響(前向き研究)については、対象集団の候補である複数の国民健康保険が行う保健事業の実施状況を把握し、糖尿病腎症等重症化予防やインセンティブ事業などの評価に加えて、A健康保険組合の被保険者を対象にしたがん検診の受診率向上およびB食品製造会社の社員を対象にした社員食堂でのヘルシーメニュー提供の介入研究を行い、研究成果は論文として発表した。
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