宮城県新生物レジストリーより1993年から2010年に診断された症例の登録情報に居住地における地理的剥奪指標(Areal Deprivation Index: ADI)が付与されたデータを得て、同指標値に基づき評価した社会経済的地位と診断時病期および予後との関連を検討した。 1993年から2010年の診断症例による人口で重み付けをした5分位に分けた地理的剥奪指標とがんの診断時病期との関連の検討では、全部位および部位別の検討で、地理的剥奪指標値が大きい、すなわち社会的に不利な経済状況にある群において進行がん(臨床進行度が領域または遠隔転移)の割合が高い傾向を認めた。ロジスティック回帰分析を用いて、性別、年齢、および診断年を補正した検討でも、全部位ならびに主要部位(胃、大腸、肺、女性乳房)について、地理的剥奪指標値の増加と進行がんとの割合の増加との間に有意な関連があった。 社会経済的地位と予後との関連の検討は1993年から2005年に診断された症例を対象として実施した。上記の5群に分けた地理的剥奪指標とPohar-Perme法により算出された5年純生存率(net survival)との関連は、全般に主要部位において地理的剥奪指標値が高い群で生存率が低下する傾向を認めた。分散重み付き最小二乗法による回帰分析による検討では、男性の胃、女性の大腸、女性の肺について両者の関連は有意であった。 本研究より、日本においても社会経済格差ががんの早期診断や予後に影響していることが明らかとなり、がん対策の立案において格差解消の観点が重要であることが示された。
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