研究課題/領域番号 |
16K09084
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
細見 光一 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90581744)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 副作用 / データベース / JADER / FAERS / Canada-Vigilance / ポリファーマシー / リスク因子 / 地域差 |
研究実績の概要 |
日本のJADER、米国のFAERS、カナダのCanada Vigilanceなど複数のデータベースを用いて、データマイニング手法により、定量的指標(安全性シグナル)から副作用の発現傾向及びリスク因子の地域差を追究した。 抗リウマチ薬を個別に算出した安全性シグナルから、抗リウマチ薬と悪性疾患との関連について、データベース間で共通してシグナルが認められた癌種があった。発現時期の解析により抗リウマチ薬による二次がん発現時期の傾向も導いた。睡眠薬についても同様に安全性シグナルから、睡眠薬と乳汁分泌障害との関連や発現時期について明らかにした。安全性シグナルや発現時期の算出は、臨床現場における副作用の予測や予防対策に有用である。 新たな着眼点としてポリファーマシーの観点から、副作用報告の症例における併用薬剤数を算出したところ、各国の副作用報告データベースで相違が認められ、日本の医療制度を反映した結果が得られた。また、レセプトデータベースも加えて複数のデータベースを用いた年齢別、副作用別での解析を行い、リスク因子としてのポリファーマシーを数値化した。年齢別では、加齢による併用薬剤数の増加が認められる一方で、高齢者のうち80歳以上において少ない併用薬剤数での有害事象発現への影響が認められた。併存疾患の増加に伴う併用薬剤数の増加が考えられる一方で、加齢による生理機能の変動の影響が推察された。副作用別において、肝機能や腎機能に関する副作用では併用薬剤数が多い傾向であり、ポリファーマシーによる薬物代謝に関わる臓器への影響が反映されていた。報告数の割合が高い「過敏症」や「出血」などは併用薬剤数が多い傾向であり、ポリファーマシーが有害事象発現の起因のひとつである可能性が示唆された。 当初の目的を推進しながら、研究テーマの更なる展開が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、JADER、FAERS、Canada Vigilanceを用いたデータマイニングとして、抗リウマチ薬および睡眠剤について医薬品による副作用発現の未知の関連性や、地域差、リスク因子として性差、発現時期、発現年齢の解析を行った。また、新たな着眼点としてポリファーマシーの観点から、ポリファーマシーの観点から副作用発現の地域差やリスク因子としての解析を進めた。 これまでの解析結果を学会等で公表しており、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
計画に従って、これまでの成果を論文投稿する予定である。 更に医薬品と副作用の関連性や、副作用の発現傾向及びリスク因子の地域差を見出す可能性があり、また、ポリファーマシーと副作用発現の関連性をあぶり出す予定である。 医薬品による副作用発現との関連性について迅速な注意喚起や安全対策に活用でき、薬剤によるリスクを最小限に向かわせる安全性の確保を目的としているが、現在までの成果を踏まえて、創薬におけるDrug Repositioning、臨床現場から基礎研究に活かされるリバーストランスレーショナルリサーチへの展開を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)旅費が予算よりも抑えられた。 (使用計画)論文投稿を予定しており、成果の公表のため合目的な予算執行を行う。
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