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2017 年度 実施状況報告書

紀伊半島多発地ALSにおける環境要因関連miRNAの解析-予防的治療法の開発-

研究課題

研究課題/領域番号 16K09085
研究機関関西医療大学

研究代表者

紀平 為子  関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (30225015)

研究分担者 伊東 秀文  和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20250061)
荒川 裕也  関西医療大学, 保健医療学部, 助教 (30733175)
伊藤 俊治  関西医療大学, 保健医療学部, 准教授 (50275351)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード紀伊半島多発地ALS / microRNA / 酸化的ストレス / SOD-1 / HEL / 亜鉛
研究実績の概要

2016年度内に紀伊半島南部住民(多発地住民)と対照住民、および和歌山県内のALS患者の血清において、酸化的ストレスマーカーと血清中microRNA (miR)を測定した。結果、多発地住民と和歌山県内ALS患者(SALS)では対照に比し、血清亜鉛低値、SOD-1活性低値、SALS患者は住民に比し、脂質の酸化的ストレスマーカーであるhexanoyl-lysine (HEL)高値を認め,これら酸化的ストレスマーカーと関連するmiRの候補を数個見出した。
2017年度は紀伊半島南部のALS多発地出身のALS患者(多発地ALS)5名から血清、尿検体の提供をうけ、酸化的ストレスマーカーとして血清亜鉛、血清SOD活性、血清HEL、尿中8-OHdGを測定した。さらに、多発地住民、対照住民、SALS患者、多発地ALS患者の血清を使用して、miRを網羅的に解析した(フィルジェン株式会社に委託)。
多発地ALS患者とSALS患者において、血清亜鉛低値とSOD活性の低値を認めた。また多発地ALSでは住民に比しHEL高値を示した。さらに多発地ALSに特徴的なmiR候補として、miR-1281, miR-3613-5pを含むmiRを数個見出した。また、多発地ALSとSALSで共通して変動しているmiRが数個認められた。本研究で血清亜鉛やSOD活性、HEL値の変動と関連し酸化的ストレス関連候補miRと考えたmiRの中には、文献的にSALSで変動が報告されているmiRや様々なシグナル系で報告されているmiRが含まれていた。
次にマウスに低亜鉛食と亜鉛欠乏食を投与し、元素分析と血清miRの網羅的解析を行った。マウスの筋力など行動観察上では明らかな異常を認めなかった。miRの解析では、ヒト血清低亜鉛で変動するmiRと共通のmiR候補が数個認められた。これらについて、さらに検討が必要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で見出したmiRについてさらに確認する必要がある。そのために、孤発性および多発地ALS患者血清検体の提供について、引き続き協力依頼をしていく予定である。
これまでに見出した候補miRについて、今後、validationを行い、さらにその有意性について検討する必要がある。validationの段階で、多発地ALS患者において有意に増加あるいは低下するmiRが見いだされなかった場合には、孤発性ALS(SALS)でのmiR発現パターンと共通して発現しているmiRについて検討する。さらに、血清亜鉛値やSOD活性、およびHEL値の高い群、低い群で見出したmiR発現パターンと多発地ALSでの発現パターンを比較して、多発地ALS患者でのmiRの意義を検討する予定である。

今後の研究の推進方策

本年度は、前年度までに見出した多発地ALS候補miR、すなわち住民や孤発性ALS患者に比較して多発地ALS患者で2倍以上増加あるいは低下を示した個々のmiRについて、validationを行う。これによって、個々の候補miRが多発地ALSで有意に変動しているかを確認する。次に、有意に変動しているmiRが見出された場合には、そのmiRの候補mRNAと作用について文献的に検討する。
酸化的ストレスマーカーについて、本年度は、多発地住民、対照住民、孤発性ALS、多発地ALSの血清と尿検体が揃ったので、2016年度および2017年度に個別に測定した血清SOD活性と量、HEL濃度、血清亜鉛濃度を再度、同時に測定し、群間比較を行いこれまでの結果を確認する。
また、血清亜鉛値、血清SOD活性、および血清HEL濃度の変動と関連して発現パターンが変動するmiRについて検討し、これらがALSに特異的かあるいは酸化的ストレスに関連するmiR候補といえるかを検討する。酸化的ストレス関連候補miRが見出された場合、validationを実施して有意性を確認する。次に文献的にその作用について検討する。
多発地住民と多発地ALSの特徴である低亜鉛状態について、モデル動物としてマウスに低亜鉛食および亜鉛欠乏食を投与し酸化的ストレスマーカー測定とmiR解析を昨年度に引き続き実施する。多発地住民と多発地ALS患者で認められたmiRの変動パターンを、マウスの低亜鉛状態で変動するmiR発現パターンと比較して、多発地住民と多発地ALS患者の特徴的miRを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

本年度は多発地ALS患者血清の提供を得られたため、多発地ALS患者と対照血清においてSOD活性を測定した。しかし、より詳細に検討するためには、すでに保存してあるSALS患者と住民(多発地住民、対照住民)血清を追加して、4群での比較をする方がよいと判断した。4群比較のためには、ヒトSOD活性測定キットは1キット86,400円(定価)で検体数からすると4キット必要となる。当該助成金では不足となるため、本年度は4群比較を見合わせた。各分担者の残金を合算し、翌年度分と合わせて実施する予定とした。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Lifestyle changes and oxidative stress in a high-incidence area of amyotrophic lateral sclerosis in the southwestern Kii Peninsula, Japan.2017

    • 著者名/発表者名
      Kihira T, Okamoto K, Sakurai I, Arakawa Y, Wakayama I, Takamiya K, Okumura R, Iinuma Y, Iwai K, Kokubo Y, Yoshida S
    • 雑誌名

      Intern Med

      巻: 56 ページ: 1497-1506

    • DOI

      10.2169/internalmedicine.56.8038

    • 査読あり
  • [学会発表] MicroRNAs characteristic to the high-incidence area of ALS in the Kii Peninsula2017

    • 著者名/発表者名
      Y.Arakawa, S.Ito, J. Kohmoto, M. Hironishi, H. Ito, T. Kihira
    • 学会等名
      WCN2017: XXIII World Congress of Neurology
    • 国際学会
  • [学会発表] Updated epidemiological assessment of amyotrophic lateral sclerosis in Wakayama Prefecture, Japan, using data from the Japanese specified diseae treatment research program2017

    • 著者名/発表者名
      M.Hironishi, M. Yasui, Y.Nakayama, T.Kihira, S. Yoshida, H. Ito
    • 学会等名
      WCN 2017: XXIII World Congress of Neurology
    • 国際学会
  • [学会発表] 低亜鉛が神経・筋に及ぼす影響のマウスを用いた予備的検討-紀伊半島南部多発地ALSに着目して2017

    • 著者名/発表者名
      伊藤俊次、深澤洋滋,荒川裕也、紀平為子
    • 学会等名
      日本微量元素学会

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公開日: 2018-12-17  

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