研究3年目には、Webによる量的研究(無記名自記式質問票調査)を実施した。質問票の開発にあたって、研究代表者と分担者がこれまでに実施した質的研究および量的研究の経験をもとに、改めて患者会や遺伝カウンセラー、眼科医から情報収集を行った。パソコンやインターネットの利便性に困難がある場合の合理的配慮として、申し出によってメール添付のテキストファイルによる回答も可能とした。研究参加者のリクルート方法は患者会のメーリングリストや口コミ等によるスノーボールサンプリング法を採用した(調査実施期間2019年2月~3月)。有効回答数は195件、平均年齢は55.2歳(中央値56.0、21-86歳)であった。網膜色素変性と確定診断される前に受診した眼科数は41%が複数であり、診断後の受診眼科数は67%が複数であった。医師からの説明について全体の44%が「質問にきちんと答えてもらえた」、43%が「病気のことがよく理解出来た」、57%が「質問がしやすかった」と回答する一方、61%が「治療法がないと言われた」、39%が「失明します」と言われた経験があり、54.4%がこれまでに病院で「直らない・治療法がないという言葉をもっと慎重に使って欲しいと思ったこと」があると回答した。外出時の困難として91%が「物や人にぶつかったことが」あり、40%が「舌打ちをされた」、26%が「突き飛ばされた」、23%が「暴言を吐かれた」経験があった。医師や医療スタッフから情報提供があった方がよかったと思われるものは最新の医療情報(66%)、社会福祉制度(57%)、ロービジョンケア(54%)、生活に役立つ道具や移動時に役立つ方法などの説明(53%)、患者会の紹介(51%)、白杖の補助金(35%)などであった。患者のニーズに合う支援が従来以上に実施されるための整備が必要である。
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